人類の限界
「とにかく開拓しまくって国を発展させようって考えと、流通を牛耳って巨万の富を得ようって考えは噛み合わない部分もあるかもな。だが、開拓を成功させた実績もあるし、物資の輸送だってあるんだから立ち回り次第では盤石な地位を築けたんじゃないのか?」
「開拓が上手く行けばその通りだな。だが、そう上手くはいかなかったわけだ。そもそもの話、最初に始まった開拓だって長年の会議や調査の積み重ねの結果としてその場所が選ばれたのだ。例えそこが上手く行ったとしても、次に行われるにはまた長い年月をかけて候補地を考える必要がある」
まあ、一番合理的な場所が最初に選ばれたわけだから、次に開拓されるのは二番目以降に合理的な場所という事になりそうだな。ただし、最初に成功した開拓地を今後は利用出来るわけだから難易度は下がり成功率そのものは上がるとは思うがな。
「新しく出来た村からの協力も期待出来るのだから、難易度は下がっているとは思うが」
「当然そこも考慮される。……が、それを差し引いても次の候補地選びは相当苦労したようだ」
「そんなにか? まあ、簡単な話ではないとは思うが……」
「新しい村を作る。この一点のみを考えるならばそこまで難しくはない。問題なのは作った村をどうやって発展させたり維持したりするかの部分だ。まさかずっと国が一つの村を支援し続けるわけにもいかんからな」
なるほどな。国からの支援ありきで成り立っているような村だと困るわけか。
「国としては新しい村を増やしていきたいわけだから、支援は手薄になっていくわけだな」
「そうだ。そこで問題になるのが、新しい村を作っている最中に既存の村で何らかの問題が発生した場合だ。その場合、国は極めて難しい判断を迫られる事になる。開拓中の村をの支援を優先して、開拓が上手く終われば良いが、失敗したら既に存在する村すらも壊滅してすべてが水の泡になる可能性がある事だな。かと言って既存の村を優先させて開拓が失敗したら次が続かない。そして決断が遅れるとそれだけで村の問題が都や開拓地にまで波及しかねないという点だ」
「理想はどっちも上手く助けるって事だろうが……そう都合良くはいかないだろうな」
「だからシンジケート側に時勢が傾いた。今の人類では拡大出来る生存圏には限界があると考えたわけだな」
まあ、当たり前の話だな。今の人類では辿り着けない場所や、生存出来ない環境なんて山ほどある。それが当時は現代では身近なところでもそうだったというだけの話なのだろう。




