シンジケートと王様の考えの違い
「まあ、すべての物資が自分の領地を通るのであれば、そこから先はどのように枝分かれしたところで問題は無いだろうな」
「利権的にはそれで良いが、万に一つ何かあってその交易ルートが使えなくなった場合、最低でも二つの国で大問題が発生する事になるから国としてはサブのルートを確保しておきたいところだな」
「当然、それは考えられていた。様々な国と交易を行っていくと考えれば、流通ルートの本数を増やす事は最重要課題だからな。その新しく作られるルート開拓を一手に引き受けるために色々と裏で根回しをしているところに、村の開拓を成功させた者が現れたわけだ。当時の認識としてはほんの小さな村だったのだろうが……結果的にはそれがアリの一穴だったようだな」
最初の最初で何としてでも叩き潰しておく必要があったわけだな。だが、ほんの小さな村だったが故に気が付けなかったわけか。
「その村が形になった時点ではまだシンジケートが圧倒的に優勢だったのか」
「まだ、と言うよりその村もシンジケートの支配する流通ルートを使っていたわけだから完全に影響下にあったと言うのが正しいな」
確かに国と国を繋ぐ新しいルートが作られない限りは優劣の比較対象にすらならないな。
「まあ、他にルートが存在しないんだからその通りだな。しかし、距離は遠いんだろ?」
「ああ。間に村や町も無いから、一度王都に物資を運んでからその村に運ぶという形で交易が行われる事になる。そのため直接的な繋がりは無いに等しいが……外国の製品を取り寄せる場合、シンジケートと王都を経由させる必要があるから入手難易度が跳ね上がるわけだ」
「外国の貴重品は滅多な事じゃ流れて来ないわけか」
「ああ。価格は跳ね上がる。そしてこの現象は他の村でも発生した。外国の商品を取り扱っている商人と、その関係者が大金を稼いだわけだ。普通なら王様も丸め込んで荒稼ぎするのだろうが……当時の王様の考えはとにかく人類の生存圏を拡大させる事だったようだ。そういう意味では利権を得ようとするシンジケートとの相性は最悪だったと言えるだろうな」
……まあ、失敗するリスクが高い投資になるだろうからな……利権を確保して安定して金を手に入れる事を優先させるシンジケートとは根本から相容れないものがあるかもな。




