国としては無視出来ない
「シンジケート側で美味しい思いの出来る者達とそうでない者達とで対立が起こるわけか。絶対的な地位を持っているならその状態でも問題は無いが……自分達に匹敵する勢力が台頭してきてなおそんな状態が続いているとしたら、確かに致命的だな」
「対立と言うほど大げさなものでなくても、利益を甘受出来なくなると他人の利益のために働くという構図が生まれやすいからな……バカバカしくなって消極的になる者は出てくるだろうな」
基本は自分の利益のために徒党を組んでいる連中のハズだからな。その利益が得られないとなれば、見切りをつけ始める者は多くなるだろう。
「……まあ、利他や社会のために組まれる派閥では無いだろうな」
「特別な利益を得られない事がわかっているのにその派閥に残る理由なんてたかが知れている。その派閥に入れない事でとてつもないデメリットが発生するか、他に居場所が無いかだ」
「……国の中枢にまで入り込むような組織力だからな……当然、経済力も桁違いだ。末席だろうと、その組織に所属しているかそうでないかとでは雲泥の差が生まれるな」
寄らば大樹の陰というやつか。
「圧倒的な経済力を持っているなら、その組織に所属出来ないという事はすなわち仕事にありつけないという事になるな」
「国に大きく関与するようになってきた全盛期の頃を考えると、本当に比喩表現でなくそういう事になるかもな。その国の仕事とシンジケートに関わる事がイコールになっていた時代もあったハズだ」
「流通に関して圧倒的な影響力を持っていたのだろうから当然の話だな。その影響力が一気に弱くなってしまうと言うのだから、他の開拓事業への圧力は本気でかけていただろうな」
それも長くは続かなかったようだが。
「圧力をかけると言うよりも、完全に支配下に置いていたと考えた方が良いだろうな。それくらいシンジケートからの協力を得られるか否かは開拓の成功率に影響を与えていたハズだ」
「その影響力を維持する事を最優先とすると、流通はシンジケートが一括管理出来るように発展させる必要があるな。つまり、まったく新しい交易ルートを作らせない事だ」
結局のところ、どれだけ村が開拓されてその数が増えたとしても、水道の元栓のように必ず通らなければいけない特定の地点が一か所でもあれば流通を完全に掌握し続ける事が出来るわけだ。一見すると開拓や発展は順調に進んでいるように見えるがその実、元栓とも言える急所が災害や何らかの理由で停止してしまった場合、流通は完全にストップしてしまう事を意味する。これは国としては決して無視出来ないリスクと言えるだろう。
