唯一の成功例からの意見
「まあ、何をされたかは知らないが、普通に考えたら意味が分からないだろうな。その妨害のせいで開拓が失敗したら今までかけた金が水の泡になるんだから」
「そこはケースバイケースなところもあるがな。今までかけた金が無駄になるから計画を中止に出来ないとひたすらに延命して、結果的にとてつもない損害を叩き出してしまった事例もある」
俗に言うコンコルド効果ってやつか……確かにそこら辺の見切りのつけ方は難しいだろうな。実際に今更計画をやめられないという理由で損害を拡大させてしまう事は良くある話だ。
「赤字を出しているから合理的に考えるなら即刻中止にすべきだが、せめて赤字分だけでも取り戻そうと考えてズルズルと続けてしまって、結果的にそれ以上の損を出してしまうわけか。まあ、そこの判断は当事者程難しいだろうな」
「そういった事例が過去にあったから成功率の低いところからは税の徴収をすべきだという意見が出たようだ」
「しかし、結果的には成功したわけだろ? そんな綱渡りな計画だったのか?」
「そうだったかそうでなかったかと聞かれれば前者だろうな。だが、そもそも綱渡りじゃない計画なんてものが存在するのかという話でもある。はっきり言って、成功率の高い低いなんて計算方法は解釈次第で何とでもなる部分だな」
もともとが無理難題なんだから成功率は低くて当たり前ってわけか。
「わざと低く見積もったのか」
「ああ。成功した例と比較したり、有識者を呼んで意見を聞いたりだな」
「成功と言うと……」
「想像の通り、シンジケート側の意見だ。当時としては唯一の成功例だったからな」
なるほどな……当時唯一の成功者がそんな方法じゃ成功しないと断言してしまえば、他の人間はその言葉を信じる外ない。第一人者と比較すれば、それ以外の人間は素人同然なわけだからな。
「成功例が一つしか存在しない以上、それを唯一の手段として考えて、それ以外の方法では成功はあり得ないと考えるのも自然な話ではあるな」
それじゃあそもそも何でやらせたんだって話になるが、コストが安ければ挑戦する価値はあるだろうな。要は採算が取れれば良いわけだから、データ収集と割り切ってしまえばやらせる価値はあるか。




