村が増えるメリット
「一つの村の開拓が成功すれば、それだけでも挑戦すようとする者達が現れるだろうからな。それが幾つもの村で成功となれば、ノウハウだって蓄積される。成功率はさらに上がるだろうな」
「勿論、そういった理由で成功率は上がるが……それだけではないぞ。最初は周囲に頼れるものなど何も無い状況で始められた開拓でも、一度村が出来てしまえばそれ以降の開拓には多少なりとも手を貸すことは出来るようになるからな」
確かに……交易相手のいない、完全に自給自足で行う開拓と比較すればそれ以降の開拓の難易度は天と地ほどの差が出るな。
「協力どころか、村同士での交易が出来るだけでも開拓の成功率は一気に跳ね上がるな。全てを自分のところで生産しなければならないという縛りから解放される」
何せ最低限度の形になっている村が近くにあれば、新しく開拓する村は生産する物の種類を絞る事が出来るからな。例えば肥沃な土地があるなら、作物を中心に育てて交易で金に換えるなり、それこそ物々交換でも良い。自分の村に足りない物を補充する事が出来る。これだけでも村に必要な物全てを完全に自給自足で賄わなければならない最初の開拓と比較して楽だと断言出来る。
「その縛りから解放されるのは何も二つ目以降の開拓地だけの話では無いぞ。最初の村だってそうだ。よりその村に適した特産品の生産に集中する事が出来るようになる」
「なるほどな……最初の村だって村に必要な物のすべての生産にバランス良く適していた土地だったなんて都合の良い話はないだろうからな。複数の村が出来上がるに連れて、それらの村の生産がより最適化されていくわけか」
土地によって地質や気候は変化するだろうからな。いくら近くだと言っても、本当に目と鼻の先って事もないだろう。
「ああ。単純に最適化されるというだけでなく、複数の村が作られる事により、それぞれが周辺を見回る事になる。それらの情報を共有する事で魔物や害獣の情報が共有される事になって安全性が増したとも言われている」
確かにそういった情報のやり取りは欠かさないだろうな。状況として一つの村が壊滅した場合の周囲の村への悪影響は深刻なものになる事が予想されるからだ。一つの村からでは一つの視点でしか周囲を見渡す事しか出来ないが、複数個所からの視点から得た情報を総合すれば、魔物や害獣の住処をより正確に把握する事が出来るようになるハズだ。




