大騒動の影響
「ああ。あの大騒動の影響で、各国のパワーバランスは大きく変化したと言っても過言ではない。具体的には、当時栄えていた国とその周辺国家ほど深刻な影響を受けたぞ。一番は何と言ってもこの国だな」
「まあ、火霊祭の優勝者を出しているのはこの国だしな」
この国の最も栄誉のある大会に優勝した魔術師の考えた金儲けの方法……原理など理解していなくとも真似しない理由は無いだろうな。
「一時期は本当に滅亡寸前……国家分裂の危機にまで陥った。深刻な影響を受けた地域と、そうでない地域で分断の機運が高まったわけだ」
「不良債権化した地域を切り捨てようとしたのか」
「まあ、結果としては回避されたわけだが……もしこれが実現していたら歴史は大きく変わっていただろうな」
それはそうだろうな。大国が分裂するわけだから、その影響は計り知れないな。
「他の国も同じ事をし始めてもおかしくは無いな。他の大国だって例外ではないのだろう?」
「どのような影響を受けたかはさておき、大国は全て深刻な影響を受けたな。まず何よりも交易が衰退したからな。これで経済に大打撃が発生した。あくまでも比較的だが、まだ影響の小さかった我が国ですら、失業者が多発したようだからな」
まあ、あらゆる製品の需要が激減するだろうからな。そしてその影響でさらに交易が消極的になり、不況が加速するわけだ。
「失業しまくって生産能力が地の底まで落ちて、購買力も下がるから製品の需要も減ってそれに合わせて供給も絞られて、さらに失業者が増えていく負のスパイラルの完成だな」
「ああ。当時の人々は遠くの国で困った事が起きても、自分達にとっては対岸の火事だと考えていたようだが、それが大きな勘違いだと気付くのにさほど時間はかからなかったようだな」
まあ、それはそうだな。地図の上のどこにあるかもわからない国がどうなろうと知った事では無いと考えるのが普通だろう。しかし、交易が行われる事が前提で生産をしていた連中は商品の買い手がいなくなるわけだから、計画は破綻する事になる。
「対岸の火事だと思ったら、こっちにまで飛び火しまくったわけだ」
「ああ。大国は体力があるからまだ良い。だが、特に致命的だったのがその周辺にある小さな村だった。何せ大国との交易で生計を立てている者が大半だったわけだからな。名もなき村は壊滅してならず者に身を落とした者も多かったと聞く」
まあ、製品を売ってその金で食料を買おうとした村からしてみたら、金を獲得出来なくなって食料を買えなくなってしまったわけだからな。持ってるところから略奪するしかないとなってしまうわけだな。




