素人にはわからない事
「まあ、ライセンスの発行で数を抑えようとした事の是非については何とも言えんな。だが、最悪の事を考えれば国からの監査をクリアする必要はあったハズだ。最悪なのはギルドの経営破綻による支払い能力の崩壊だな」
保険金が出せないって状況か……確かにそれは不味いな。
「金を集めるだけ集めて倒産か。客から詐欺と言われても文句は言えんな。当然、国に対して何らかの要求はしてくるだろうから、問題を起こされる前に規制しておきたいところだろうな」
「まあ、言ってみれば約束事だけで成り立つ商売をしているわけだからな……信用されていなければ話にならないのはその通りなのだが、いざ問題が発生した時に壊滅的な影響が出る……というか、出たせいで国が出す条件を満たしていない組織には保険のような業種は出来ないように法律が制定された」
実際に経済に壊滅的な影響が出たのか。
「まあ、法律なんてのは問題が深刻化してから作られるものだしな……」
「現代なら社会問題だとかのレベルで済む話だろうが、当時の事を考えれば本当に国が亡ぶという事もあり得たのだぞ? 画期的な事を考えるのは良いが、問題の方もちゃんと考えて欲しいものだがな」
「画期的過ぎて誰も理解出来ていなかったんじゃないか? まあ、どこの誰が思いついたのかは知らんが」
何せ本当に上手く行けば何もしなくても金が転がり込んで来るシステムを開発したようなものだからな。まあ、実際には金を支払う事になるのだから、どれだけ正確に期待値を算出する事が出来るかにかかっているわけだが……そんなものは素人にはわからない事だろう。
「ああ。これを最初に思いついたのも、ご多分に漏れず火霊祭の優勝経験者だぞ」
「……そんな問題を起こしておいて良く火霊祭が最高の栄誉を持つようになったものだな?」
「そればかりは仕方あるまい。それに、結果的にではあるが発想としては間違いなく天才のソレだからな。何事にも最初というものはある。それに、一部が常識外れの問題を起こすというだけで、殆どの優勝者は文句無しに偉大な人物だしな」
……良くも悪くも常人の範疇にはいないってわけか。そんなに卓越した頭脳を持っているというのであれば、実際に発生した問題なんてのは全て想像通りって可能性もありそうだな。




