計算に不服がある場合
「分配の比率は……まあ、出資額に比例するものとして、トレジャーハンターが宝物を手に入れる事が出来なかったら出資した金額の何割かを支払う感じか」
「正確には、成果が出資額に届かなかった場合だな。この場合、保険適用になる」
「……その成果は誰がどうやって計算するんだ?」
トレジャーハンターがどんな物を持って帰るかなんて見当もつかないハズだ。……まあ、ある程度の目標というか、勝算を持った上で挑戦しているだろうから、それなりには予想はついていてもおかしくは無いが……普通に考えれば問題が起きそうになるな。
「保険適用かどうかの判断になるため、当然保険ギルドが鑑定して計算する。勿論、懸念点はわかるぞ? 鑑定した物を不当に高く鑑定したり、本来なら価値の無い物も鑑定して成果を水増しして保険適用外にしようとするのではないかと考えているのだろう?」
「まあ、そうだな」
「その対策として、保険契約を結んだ客は保険ギルドに対して鑑定によって出した金額で成果を買い取ってもらうよう要求する事が出来るようになった。これでギルドは成果を過小評価する事はあっても過大評価する事は無くなったわけだ」
どう考えても大した価値のないガラクタを高額に設定して来る事があまりにも多い場合は、『じゃあ、その鑑定した価格で買い取ってくれ』と要求出来るわけか。確かにそれならガラクタに値段をつけるなんて馬鹿な真似はしなくなるだろうな。
「過小評価してくる場合はどうなんだ?」
「そこは確かに問題になっているな。保険適用になる程値段を引き下げる馬鹿はいないが、成果の一部を安く見積もる事で分配の比率を歪ませる事を狙えるわけだ。つまり、一部の人間に一方的に利益を得たり、損を押し付けたり出来る事が問題視されている」
保険会社とグルになる事が出来るわけだな。
「対策は……自分の方でも鑑定が出来る人間を用意しておく事くらいか」
「現状、それくらいしか方法は無いな」
「しかし、過小評価されていると進言したとして、その後はどうなるんだ?」
「その場合、分配を受け取る権利の一部を放棄する事で優先的にその分配を受け取る事が出来るようになる。早い話がオークションのようなものだな。因みに、そのオークションで使える金は出資した金……つまり、分配を受け取る権利書だけだ。ほんの僅かに出資金を出して、成果が出たら資金を大量投入して実質的に買い占めるといった真似は出来ないぞ」
まあ、当然のルールだな。そんなのを認めたら誰も出資金を出さなくなる。そして、過小評価された鑑定を出していると思ったら、鑑定額よりも高い割合でそれを買い取れと言われるわけか。確かにもっと価値は高いと思っているんだから、その割高な値段で買えと言われても受け入れる道理だな。




