どう成り立たせているのか
「利便性か、その通りだな。実際にそれをやろうとしている者は少なからず存在している」
「そんなのがいるのか? どうやって成り立たせているんだ?」
「保険……という形を取っているらしい。仲介者に金を支払い、取引が問題なく完了すればそれで終わり。取引が失敗したら保険金を支払うという方法のようだ」
保険か……確かにそれなら必要なのは他人からの信頼ではなく単なる保険金の支払い能力と、本当にいざという時に支払ってくれるのかという部分だけだな。
「金で済む話ならそれで解決するが……商品が欲しいのに手に入らなかった奴はどう対応するんだ?」
「まあ、そこは金で対応だろうな。後は保険料を高く設定するか、それとも安く設定するかの話だ。これなら問題点はその保険を信じるか否かの二択になる。そうなれば、市場原理が淘汰するかどうかを審判するわけだ」
その保険会社がまともに経営していれば、順調に業績を伸ばしていって発展するというわけか。
「まあ、致命的問題点を残してはいるが、現状では妥当性は高いだろうな」
「致命的問題とはなんだ?」
「そりゃ、身内びいきだろ。意図的に高く設定したり、あるいは逆に安く設定したりだ。これをやられたら一部の人間が一方的に損したり得したりするぞ。お前の言う市場原理はその業種が十分な数存在する場合に限り成立する理屈だ。独占ないしは寡占状態では他に選択肢が無いのだから淘汰圧は極めて弱くなる」
競争の必要が無い環境では競争なんて起きないだろうからな。
「なるほどな。そう上手くはいかんというわけか。そもそものハードルが極めて高い事も考えると……ただの絵空事に終わるか?」
「それはどうだろうな。保険料の設定を的確に算出する事の出来る卓越した分析能力があれば……不可能というわけではなくなるだろう」
まあ、難しい話だろうな。何か問題を起こした際に何のお咎めも無しでは問題を起こしまくった方が得だろうからな。
「全く新しい事に挑戦する者に対して正しく算出出来る者は……少ないだろうな」
「なんだ、その全く新しい事って言うのは?」
「端的に言えばトレジャーハンターのようなものだ。資金を募って、何かを手に入れればそれを資金を出した者同士が分配する仕組みのようだ」
保険ってより株式みたいな商売をしている奴がいるみたいだな……?




