見張りの見張り
「まあ、お互いに商品も支払い能力も確認していない状態で取引を行うわけだからな……それ相応の信頼関係を結んでいないと成り立たないだろうな」
「その信頼の証が社会的地位というわけか。妥当だな」
「後は身元が証明されているような会員制のクラブとかか? カジノでも特に金を持っているであろうVIPルームとかならあり得るかもしれんぞ」
まあ、要するに金持ちである事がお互いに証明されているような場所でなら、実物を見ないで取引が出来るかもしれないってことだな。
「会員制のクラブか……なるほどな」
「まあ、何にしてもかなり特殊な空間だな」
「ああ。お互いに信用されているか、第三者の介入が必要になるな」
第三者か。確かに商品の品質にせよ、支払い能力にせよ、それらを担保してくれる仲介者がいてくれればかなりスムーズに取引は出来るだろうな。
「お互いが信用出来る商売人だと保証してくれるような第三者か? その両者から信用されているのは前提として、何かあった時に責任を肩代わりしてくれるくらいの担保がないとただの世間話で終わりそうなものだな。その場合、仲介手数料はいくら取れば成り立つんだ?」
「それは、信用の度合いによって変わるだろうな。信用されている者ほど安く済ませて、逆に信用の薄い者ほど高く設定すれば商売として成り立つハズだ」
「それらを格付けするとしたら、参加者は少しでもランクを上げようと必死になるだろうな」
格付け会社の完成というわけだ。
「まあ、手数料が安くなると考えれば必然的にそういう流れになるだろうな。……だが、貴様のその考えには一つ盲点があるぞ?」
「なんだ?」
「その信用度の格付けをする者の信用性は誰が保証するのか? という点だ」
……まあ、当然その問題にぶち当たる事になるな。
「見張りの見張りは誰がやるのかって話だな。まあ、利便性を考えてどっかの誰かがそれをやるってのが妥当だろうな」




