元に戻すのは難しい
「まあ、一度人が流れたのを元に戻すのは難しいだろうな」
その道を選ぶのがよほど合理的でもない限りは選択肢を変える必要は無いわけだからな。
「そうだな。そもそも交易ルートを利用する商人達も単なる移動通路として利用しているわけではないからな。道中の村で商売をするわけだから、そう気軽に道を変えられるわけがない」
「道を変えれば商売相手が変わるわけだからな……よほど盛況だという噂でも聞かない限りは変える理由は無いだろうな。それか新規開拓か?」
せっかく手に入れた顧客をわざわざ手放すようなものだ。それ以上のリターンが見込めない限りは変えないだろうな。
「どちらも一度人が離れた村には適さないな。特に市場の勢いは冷え込んだ状態に陥っている」
「まあ、それはそうだろうな」
「それに、魔物を狩り尽くすと言ってもそれ相応の時間は必要になるからな。そうやって時間をかけている間に商売で出遅れてますます人の通りが悪くなっていく」
交易ルートが少ない時は何かしらの形で選択肢に入っていたとしても、数が増えていけば条件の悪い道は使われなくなっていくだろうな。
「ある程度の数の交易ルートが開通してしまうと、それ以降は通行人の奪い合いになるだろうからな。魅力の無い村は一気に寂れていくだろうな」
「まさにその予想通りの事が起こっているぞ。行商人が足を運ばなくなってしまった結果、となりの村や町まで移動しなければ物を買えなくなってしまった。一昔前まではそれで話は終わっていたのだが、移動方法が増えてきた事によって若者が市街地に移動するようになって村から若者がいなくなるという事態も発生している」
世の中が便利になっていくにつれて、より利便性のある所で生活しようとする人達が増えたわけか。
「都市部への人口集中か。まあ、仕方ないな。物が無いんじゃ、物が豊富にある都会へ移り住みたいと考えるのは自然な話と言えるだろう」
「その現象に拍車をかけているのが、学園の存在だな。名門校に入学する場合、その多くがある程度の利便性が保証されているようなものだからな。一度それを味わってしまうと、卒業した後に故郷に帰るのを嫌う卒業生が出てくるらしい」
生活水準を下げる事が出来ないって手合いの連中だな。まあ、こればかりはどうしようもないな。




