今は風前の灯
「……今日まで生きてきたって言うが、今となってはもう風前の灯なのか」
「陸上の交易ルートだけでもかなりの数があるからな。それに加えて海や空も移動出来るとなれば、陸路の重要性は比較的減少する」
全ての輸送手段で談合でもすれば利権は守れるが……もしそんな事がバレたらそれだけで壊滅的な事になりかねないからな。
「それでも港から降ろした積み荷を内陸にまで運ぶには陸路を使うしかないだろう? そこら辺はどうなんだ?」
「そこまで特殊な場合なら残るだろうな。だが、税を支払わなくても良いとなれば、多少時間をかけてもルート変更をする理由にはなりえるだろうな。まあ、つまりはただでさえ弱い利権がさらに弱くなってしまうわけだ。これは何としても阻止したいところだろうが……どうする事も出来ないだろうな」
もはやならず者を雇って村を襲撃させるという手段も取れないか。
「奇跡が起こるのを待つしかないわけか」
「それかもしくは他の勢力が味方になってくれる場合だな。そんなもの好きがいればの話だが」
「その利権を守ったところでもはや何の見返りも期待出来ないわけだからな……」
確かにそれは物好きとしか言い様が無いな。
「それ以上に国から睨まれる事になる。こればかりはどうあっても避けたいハズだ」
「……次狙われるのは自分たち……そう考えたとしてもおかしくはないだろうな」
救えるというのであれば問題はないのかもしれないが、助力空しく組織が解体されれば、そいつらは単に悪目立ちしたという事になる。
「次に狙われる理由としてはもっともだな。下手をすればかえって優先的に狙われる可能性すらある」
変に助ける事に成功してしまうと、今度は狙いを変えられる危険性もあるわけだ。
「狙いを変えられた時に、今度は助けてもらえたからとそいつらを助けるか、それとも自分たちが狙われなくなった事に安堵するかで色々と変わってきそうだな」
「合従と連衡だな。すべてが一丸となって事に当たれるなら対抗する事が出来ても、一つでも裏切られたらそこから瓦解していき、最悪各個撃破されて全滅だ」
そういう意味では利権を守りたい連中はそのジャンルに問わず一丸となるべきだ。まあ、自分の利益のために成り立っている概念がそんな協調性を持つとは思えないがな。




