期待されていること
「ああ。大方の予想通り物価が跳ね上がった。そうなると困った事になるのは国だ。何せ経済は不安定になる上に、金のかなりの部分を一部の村に集中させてしまう事になってしまうからな」
世に出回っている通貨をそれなりの割合で保有しているとしたら、その影響力は計り知れないな。
「国だって馬鹿じゃないんだ。何かしらの対策は打っただろ?」
「まあな。最初は税を引き下げるように命令したが、それに対して関所の数を増やすという屁理屈で答えて、それで国がブチ切れて一時的に交易を停止した事がある。流石に物流が停止したらどうする事も出来ないのですぐに謝罪して、交易が再開となった。これで解決かと思われたが、あの手この手で重税を課すようになってな。当時としては唯一の交易ルートだった故に、国は強硬策が取れなくなっていた。国の中枢への献金もこの辺りから行われていたようだ。……で、新しい村の開拓の成功で新しい交易ルートが開通した事で一気に解決の兆しが見えるようになったわけだ」
あまりにも調子に乗った重税を課したら他に逃げ出す危険性が出たわけか。
「この後交易ルートが一気に増えていったんだろ?」
「ああ。それに合わせて独占状態が崩壊し、利権はなくなっていった。その後はさらに異なる輸送方法の発明により、新しい利権が生まれては消えていくという事を繰り返し、何百年と続いていった利権を完全に破壊するために関所の税を撤廃した村が出来たわけだ」
「何百年も続いている問題かよ……人間というのは変わらない生き物だな」
「人間なんてそんなものだ。それを無くしていって、とうとう完全に破壊しに行ったと言ったところだろう。成功するかどうかはわからんが、もし上手く行けば他の輸送方法に関しても利権を潰す事が狙えるかもしれんと期待されている」
他の輸送にも利権が絡んでいるのか……まあ、運輸を牛耳っているなら当然作るか。




