価格の吊り上げ
「国にそんな小細工が通用するのか? 普通に考えたらありえないと思うんだが……」
「国だってある特定の村にどれだけの税収があるかなんて完全には特定できるものではないからな。人口や経済規模からある程度の数字を出しているに過ぎん」
具体的なデータから算出したわけではないのか。……まあ、そんな詳細なデータが手に入るわけもないか。
「しかし、交易の際の税となると両方の国にすぐにバレるだろう?」
「当然すぐにバレる。しかし、道はそれ一本しかないという状態だからな。軍隊を派遣して交易ルートとして使い物にならなくなってしまっては本末転倒だ。それに、国からの要求は満たしているわけだからな。領民を重税で苦しめているという名目で軍隊を派遣するというのも難しい。そもそも領民の暮らしはそこまで逼迫しているものではなかった。物価そのものが跳ね上がる事でバランスは取れていたのだ」
物価が……まあ、税金が高いんじゃそうなるしかないな。
「そりゃ、交易の要みたいな場所なら物価なんていくら高くても売れるだろうとは思うが……その物価前提で商品を買わなきゃいけない近隣の住民とかはどうなる?」
「とてもじゃないが庶民に手が出せるようなものではなかったようだな。基本的に交易品は超が付くほどの高級品扱いだったようだな」
そもそもの流通する量そのものに限界がある上に税金を重ねまくって物価が跳ね上がったのか。まあ、商品を売る商人だって、支払った税金を考えた上で利益を出す必要があるんだから商品の値段を吊り上げるしかない。
「金持ちにしか買えないような物ばかりだったというわけか」
「そういうことだな。この時の物価の上昇量は尋常ではないぞ? 何せ交易品というだけで同じ品質の物でも価格差は甚だしい場合は数十倍なんて事はざらにあったからな。それで商人が得られる利益は限られたものだというわけだ」
「往復でルートを通る必要があるわけだからな……それに、商品を売った金で現地で商品を仕入れて、また交易ルートで移動して税金を払って元の国に帰ってそこでまた商品を売るって生活を繰り返すわけだから、領主殿は笑いが止まらないだろうな。そして、たかが知れた品質の品物がそんな高額で取引されるなら、現地の人々もどんどん値段を吊り上げていくだろうな」
そこしか通る道が無いのだから、税金なんてかけ放題だな。そして、そんな金額で売買するとなると、商人が仕入れる商品の値段だって跳ね上がったものになるだろう。結局はそれでも利益が出るように価格設定をする事になるのだからな。




