塵も積もれば山となる
「なるほど、大量に関所を並べてそこを通る人間から税を取り立てまくってたのか。それなら、税を取らないと言う政策にもやってみる価値はある。何せ税として支払われるハズだった金がそのまま経済に回される事になる事が期待出来るからな。だが……それだけに、関所を並べまくった貴族連中は黙っていないんじゃないか?」
人々から回収出来る金が一気に目減りするなんて事をただ指をくわえて観ているだけって事は無いだろう。何かしらの策は打って来ると思うが。
「黙っているという事は勿論無いだろうな。原則、国としては税を少しでも多く取り立てたい立場ではあるのだから国のために貢献しているのは事実だ」
税金を多く取り立てているという事は、国に流れる税金もそれだけ多くなるって事だ。そういう意味では国としては少しでも税率を上げたいと考えているだろうし、多額の税を納めているであろうその領地は国からしてみたら優良領地であり、そこを統治している人間は優秀な領主と言えるわけだ。
「だが、それじゃあ国民からの非難があったり苦情が来たりするだろ?」
「まあな。だから国は貴族達をどうにかしたいと思っている。だが、税収が減って良いとは思ってはいない。だから貴族に入る金を少しでも減らしたいのだろう。要は一つの税が安くなってもそれ以外のところから税を徴収して合計の金額が増えれば、国としてはそれで問題が無いわけだ」
最終的な税収が増えれば国としては問題は無いわけか。逆に言えば、貴族達はいったいどれだけの金を集めてたんだって話になるが。
「国に流れる金がそんなに少なかったのか? と言っても、国を相手にそんな真似が出来るとは思えないが……」
「国が提示している条件は全てクリアしている。そこからさらに貴族の取り分である税を上乗せするのだが……その上乗せの仕方が姑息過ぎると言うのが問題なのだ。その最たる例が関所を大量に並べて一つ一つの税を安くするという方法だな。これで見かけ上の税率を安くして国へ上納する金額を抑えたようだ」
税を安くする代わりに徴収する回数を増やしているのか……? それに何の意味が……いや、関所一つに誤差の範囲レベルでほんの少しだけ領主へ支払う税をかさ増ししているのか。一つ一つが誤差でもチリも積もれば山となるというわけか。




