利権潰し
「今も続いているのか……まあ、安全が確保されているなら拡張工事もやりやすいだろうからな」
「それはあるだろうな。だが、現代では物資の輸送方法も随分と充実してきているからな……利権と言っても大層なものでもないぞ? やり過ぎれば他の方法を取られるだけだからな」
「まあ、他の交易ルートだって似たような事はやってるだろうからな。自ずとその辺りで収束したのか」
やり過ぎると他のルートに逃げられるが、これは逆に言えばやり過ぎさえしなければそのルートを使い続けて貰えるわけでもあるからな。今までそのルートを使っていたからとか、そういった理由があれば長く使い続けて貰えるわけだ。それに、輸送する物によっては途中の安全管理も徹底的に記録する必要のある重要物資だってあるハズだ。例えば国で管理するような危険な薬品なんかは管理法から輸送のための手続きまで完全にマニュアル化されているハズだ。そうなれば交易ルートを変えるにしても、その度に国に申請してマニュアルを改訂する必要が出てくるわけだから……まあ、頻繁に変えようとは思わないだろうな。
「ああ。今まではそうだったが、これからはそれも怪しくなって来ると言われているな」
「輸送の量が減るのか?」
「そういうわけではない。ここ最近、関所を通る際の税が撤廃した町が現れた」
「税の撤廃って……町にそんな権力があるのか?」
「勿論町の独断ではない。国と話し合って関所で税を取り立てないようになったわけだ。これによって物流が大きく変わるだろうと言われている」
そりゃあ、輸送のコストが減るならそれだけでルート変更の理由に成りえるからな。
「関所で税を回収しなくても良くなる程金が集まってるのか?」
「どちらかと言えば物流を集中させるのが目的だとされているな。それに領主が無意味に設置した関所を咎めるという意味合いも大きいらしい」
なるほど? 関所を通る度に税を払う必要があるわけだから、関所は一つでも多い方が収入は増えるのか。そうやって領主が増やしまくった関所を自発的に減らしてもらうために税を無くして流通を集中させるわけか。所謂利権潰しって奴だな。関所で金を稼いでいた連中からしてみたら看過出来ない事だが……領主達が妨害工作を諦めるまで粘れる自信があるというわけか。




