シンジケート側の誤算
「三本目か。そんなものが作られたら交易ルート一本当たりの物資の量は随分と目減りするだろうな」
「ああ。その上さらに自分達で作る分も含めれば四本になってしまう。こうなってしまえばいよいよ交易の独占は崩壊する事になる」
「三本目の交易ルートの開通は何としてでも阻止しないとならなくなってしまったわけだな?」
独占状態が崩壊すればその先にあるのは自由競争だからな……独占は無理にしても、せめて自分達の勢力のみで寡占状態を維持しておきたいと考えているところに更なる新規参入は致命傷になりかねないな。
「まさか国の支援のもと開拓を開始する自分達が失敗するわけにはいかないからな。彼らには失敗してもらうか、もしくは二本目のルート上の村にシンジケート側に寝返ってもらうしかない。……まあ、証拠が無いとは言えならず者達が誰の命令で襲撃して来るかは誰の目から見ても明らかだったからな。何としてでも開拓そのものを妨害する必要が出てきたわけだ」
利権が絡んでいる以上は多少金がかかってもやむをえないだろう。だが、最悪な事にその金をかけた妨害工作すらも失敗に終わってしまった事か。
「村の開拓者がシンジケートと対立した勢力の当事者という時点で交渉や懐柔は絶望的。新ルートの開通の阻止に金を惜しんでいる場合じゃないわけだな」
「その通りなのだが、結果としては失敗に終わってしまった。金を惜しんでしまったのか、それとも相手の行動が早過ぎて戦力を揃えきれなかったのかは定かでは無いがな」
「どっちもあり得るな。だが、村の発展具合からどれだけの防衛戦力を備えているかは想像が付きそうなものだが……?」
普通に考えたら……少なくともシンジケートの連中の常識で考えれば新しく出来た交易ルートでの利権確保に動くハズのところをそれを全て投げ出して次の開拓を始めてしまったわけだからな。初動が遅れるのは仕方ない事だろう。しかし、それなら妨害が上手く行かないのも予想出来ると思うが。
「防衛戦力を見誤ったのには幾つかの理由が考えられるな。一つ目は前回の失敗の原因でもあるのだが、自分達が比較的安全な土地で開拓していたせいでそこまでの過剰な戦力を常備していなかった事。もう一つが相手が襲撃が来る事を想定した上で開拓をしていた事だ。この二つが重なって要塞のような村が完成していく事になる」
「それで何度も失敗が重なって、最終的に破滅していくわけか……」
守る側のモチベーションが高いとそれだけで攻める側にとっては厄介な事になるからな……なら、攻める側のモチベーションはどうかと言うと、勝てたら略奪出来ると考えていたのかもしれないが、それは言い返せば負けそうになったら最悪逃げれば良いと考えていても矛盾はしない。それに侵略者側の規模が大きくなっていくと、当然頭の良い奴も増えていく事になるだろう……そいつらからしてみたら働かなくても金が転がり込んで来る奴のために命を懸ける事になるのだからそれなりの報酬は欲しいハズだ。その報酬が好きなだけ略奪して良いというだけで、黙ってても金が懐に入って来る連中の仲間入りが出来るわけではないと考えたなら、バカバカしくてやってられんかもな。




