シンジケートは丸儲け
「ああ。当時としては大国同士を繋ぐ唯一の交易ルートで、安全も確保されていたからな。その土地の価値は計り知れないものがあった。その土地の権利が金で手に入るというのであれば、買い手は幾らでもいたわけだな」
「……で、一番金払いの良い奴に売り捌いたわけか」
「それだけでは無いぞ。土地の権利書こそ売ったが、別にそれでその村から出て行ったわけではない。普通に居座って商売を続けた」
「ん? ……いや、そうか。別に出て行く必要は無いのか」
土地の権利書を売ったから出て行くとなったら、村人全員が出て行く事になってしまうからな。それじゃあ開拓した意味が無い。
「ああ。出て行くどころか、村長の立場に収まったようだ。まあ、当然の事だな。権利書を買い取った貴族だって、まさか現地へ移住して統治するわけでは無いのだから、誰かに統治を委託するしかない。それなら、元々村を統治していたシンジケート側の人間に丸投げしてしまった方が効率が良いからな。貴族としては定期的に金が入ってくれば文句は無いわけだ」
「シンジケートはほぼ丸儲けってわけだな。権利を売っても実効支配は続けられるのだからな。しかし、村人は相当大変な思いをしただろうな。権利者が予定と変わった事で国籍自体が変わってしまったのだろう?」
土地の支配者が変わった事で国籍が変わるというのも中々凄い話だな。しかも最初は植民目的で生活していたんだから本末転倒だろう。とは言っても、当時の人類は壊滅一歩手前。案外そんな事を気にしている者は少なかったのか?
「大変……なんてもんじゃないな。国籍が変わった事でそれ以降の入植者が変わってしまったからな。最初の開拓をしてきた入植者達は一気に淘汰されて、最終的には追い出されたという話だ。これが繰り返された結果、住民同士での対立が激化する事になってしまった」
近隣の住民が確実に追い出した側か追い出された側かのどちらかの経験があるって事かよ……対立がどんなに激化しようが知った事じゃ無いと言わんばかりの暴挙だな。
「そんな事を何度も繰り返していたら開拓中に人が寄り付かなくなるんじゃないか?」
「いや、村人を裏切った張本人は居座って商売を続けているからな……開拓しているのは別の人間だ。それに当時は情報伝達も限られているから、開拓している奴がシンジケートの人間だなんて誰も思いもしないわけだ。……そもそも、シンジケートの事を知っている者自体が殆どいなかった事だろう」
何も知らないまま良い様に使われていくわけか。




