どのように選ばれたか
「一般人なのはともかく、それはそれでならず者からの襲撃に耐えられたのは凄い話だな。最初の何度かは現地民だけで何とか対処したんだろ?」
「そういう事になるな。まあ、ならず者と言っても当時そこまで性能の優れた武器を持っていたとは考えられんから、壁を作って敵を恐れずに立ち向かえれば勝算はあったハズだ」
「魔法だってあるだろう。それも壁で何とかなるものなのか?」
「魔法と言うなら防衛側にだっているからな。予め壁を用意している方が有利だろう」
なるほどな。流石に壁をぶち抜く程の高出力の魔法なんて普通の人間には出せないか。
「一度守りを固めてしまえば、そこを襲撃するにはそれなりの人数を揃える必要があるな。しかし、基本的に生産能力を持たないならず者が多数集まってその勢力を維持し続ける事が出来るかと言うと……不可能だな」
つまり、一定以上の防衛能力を有してしまえば、余程の事が無い限りは安全と言えるわけだな。
「ああ。その手の連中は少人数だからこそ成立するのに、人数を増やし過ぎればその末路はだいたい仲間割れだからな。そのため魔物からの襲撃に備えていればそのついでという形でならず者達への対策にもなっていたのだ。……シンジケートが作られるまではな」
「そうか……開拓事業で資金を獲得している組織だから、今の制限が解除されるのか」
人数が増え過ぎる事で起こる弊害も、巨大組織が存在するなら、武器も食料も……侵略に必要な下準備は全て揃えられるわけだ。その上全体をまとめ上げるためのリーダーだって用意出来る……そうなった場合の脅威度は桁違いになるな。
「ああ。ならず者と言っても大概の魔物よりは頭が良いからな……そんなのが数を揃えてやってきたらまともな村などひとたまりも無い。もっとも、まともな村程度の規模が相手にそんな集団は揃えられないがな」
確かにな。侵略するために事前に武器や食料を確保する必要がある以上、侵略する村にはそれ以上の物資が無ければかえって損をする事になる。
「つまり、そんなものが襲いにかかって来る程にまで開拓に成功した村があるって事か」
「ああ。そこからは泥沼だ。一度侵略に失敗した事でシンジケートの方も損をするようになってな、それを取り返すためにまた同じ村を襲撃するしかなくなってしまったわけだ」
国が相手じゃ軍隊を敵に回す事になるからな……防衛能力の乏しい開拓中の村を狙うしかないわけだが、小さな村じゃ大した物資は手に入らん。標的は必然的に絞り込まれるわけか。それなら国もどこの村に魔術師を派遣させるか一目瞭然になるわけだな。




