遠回りな話
「なるほどな……確かに開拓を終わらせた後で転々とする事が出来るのは少々薄情にも思えるな……」
人間……に限った話では無いが、年を取れば取る程自分が作り上げた物に対して愛着が湧くものだ。それが苦労して作り上げた物なら猶更な。気楽に捨てる事が出来るというのは楽に作り上げたか、それとも若気の至りか……自分の国を作ろうとしたのは案外そういう理由か……? いや、それだと時系列が合わんな。この理屈だと開拓している内に独立への願望が沸き上がった事になる。……が、オリヴィエの話を聞いている限りはこの独立はかなり前から意図的に計画されていた物だと言う印象を受ける。
「情が無い……と言うよりも、合理性があるようにも見えん。開拓の動機が完全な利益追求だったとしても、開拓し終えた村での経済活動よりも次の開拓で得られる利益の方が多いと判断出来なければ、やはり永住すべきだと言う結論になるからだ」
確かに……経済活動において最も重要なのはインフラ作りだ。最もコストのかかる部分だと言っても良い。そして、当たり前の話だがそのコストの回収には極めて長い年月が必要になる。そんな究極の先行投資と言っても差し支えない事業を生業としておきながら自らの意思で経済基盤を手放す……これは合理的とは言えないな。
「単純な金儲けが理由じゃないな……最終的にその人物は国を作ったようだが、それはどこかのタイミングでそう考えるようになったのか? 最初からそれが目的だったように思えてならないが……」
「自分の国を持つことが目的だった? ……ありえるな。出来たばかりの国が一つだけポツンとあっても滅びるのは目に見えているからな。交易出来る相手がどうしても必要になるだろうな。それを国からのバックアップを受けながら先んじて作ったという事か?」
かなり遠回りな話だが、そういう事になるな。




