普通は愛着が湧く
「まあ、その手の研究は資源が眠っているとわかり切っている以上は続けられるだろうからな。海の底ですら発掘するのに、地上での採掘を研究しない理由は無いな」
確かに海の底を掘り進めるなんて真似はそんな気軽には実行に移せないな。
「それだけたくさんの人間が研究を続けていたという事だろう。周辺地域の開拓と研究への投資を同時並行していたという事は、かなり長い年月を見据えた計画だったと考えられるな。いったいどんな人だったんだ?」
「活躍していた場所や時代だけに、詳しい身元は良くわかっていないらしい。だが、この国の生まれで火霊祭には何度か出場した事があるという事まではわかっている」
「順位とかもわかるのか?」
「いや、わからん。順位を細かく記録するようになったのは、人類の安全が確保されるような時代になってからだからな。だが、これは逆に言うと優勝経験やそれらの争いになる程の順位にはなれなかった事を意味していると言えるわけだ」
なるほどな。当時は参加する選手の絶対数が少なかったのか。まあ、世界中から人が集まって来るなんて言うような事にはならなかったハズだしな。
「ずば抜けた天才だったってわけでは無いのか……? まあ、国の中枢ではなく新天地の開拓なんて言う最前線にい続けたのだからありえる話かもな」
未開の地の開拓を何度も繰り返すって事は、開拓を始めたばかりの頃は大した記録も取ってはいないだろうな。記録を残す事が出来る程の余裕が出るころには、村人達とはすでに打ち解け合っているだろうからな。
「まあ、前線にい続けたのは単なる現場主義という考えも出来るがな。だが、開拓を成功させてはその土地を後にしてまた別の場所で開拓を繰り返す……これが出来るのは並みの精神力では無いな。全くのゼロの状態から交易が行われるレベルまで村を発展なんてさせてたら普通はその土地に愛着が湧くハズだからな。実際に、開拓を成功させて国からの報酬を得た者達の大半はそこを永住の地としたと言われているからな」
これはオリヴィエの言う通りだろう。単純に愛着が湧いたというのも事実だろうが……単純に次も成功するとは限らないという恐怖も同時に考えれば、とてもでは無いが次に挑戦しようとは思えないだろうな。




