研究の取捨選択
「研究の結果、未来予知じゃない事が有力視されるって事は、当時の知識で発掘技術の発展は予想可能だった事がわかったのか?」
「そういう事になるな。状況としては貴重な鉱物資源が豊富にある事を知っていたという前提で話は進むが、それを掘り出すための技術を進めるためにその手の技術への投資に積極的だった事が判明している。この事から、そういった技術革新に関する知識も貪欲に集めていただろうと考えられ始めているわけだ」
なるほどな。場合によっては金を出してるだけで本人は専門的な事は何もわからないって可能性もあるが、そんな感覚で数々の開拓事業を成功に導けるかと言われたらそんな都合の良い話は無いだろう。
「将来性のある研究に資金をつぎ込んだわけか。その投資すべき研究に対して投資する事を間違えなければ、技術は発展していくかもな」
「結果から見れば、彼の投資は実を結んだわけだな。だが、これは極めて凄い事だ。私達の視点から見ればその研究が画期的である事は一目瞭然なのだが……それは画期的であるという事実を知っているからだ。当時の人から見てそうだとは限らないからな……それに気が付ける時点で非凡と言えるな」
「それはそうだろうな。画期的なのはあくまでも研究が成功したらの話に限られるだろうし、場合によっては成功した研究であっても、それが巨万の富を生み出すものだという事がわかるまでに時間がかかる事だってあるだろうからな」
それが何の役に立つのか一切わからないような研究だって探せば山のようにあるだろう。だが、問題なのはその全く役に立たない研究が未来永劫役に立たないとは誰にも言い切れないという点だ。
「勿論そういう類のものもあるな。そんな中で発掘技術を発展させた手腕は見事と言うほかないな。この、どの研究に資金を投与するのかの取捨選択の正確性は現在でも説明が付かない部分だな。直観が優れているとも嗅覚のようなものともいわれているし、やはり未来予知が出来ると言われている根拠でもある」
まあ、将来絶対に役に立つと断言出来る事なんてそうそうありはしないからな。
「資金をつぎ込んでいたと言っても、そいつ本人だけで研究をしていたわけでは無いんだろ? 他にも優秀な研究員が多数揃っていて、技術発展を実現させていたんじゃないのか?」
研究と開発はまた別の異なる才能が必要になるからな。優れた科学者が優れた発明家になれるとは限らないわけだし、逆もまた然りだ。




