独立の成功例
「国に本気で対策チームを作られるレベルって、いったい何をやらかしたんだ? 独立でもしたか?」
「さあな。だが、独立では無いハズだ。独立では土地の権利書を売る相手がいなくなるからな。それに、実際に独立した国も幾つかあったしな」
本当に国として独立した開拓地があったのか……にわかには信じられんな。
「その独立はやらかしにならないのか?」
「難しい質問だな。結果的には失敗に終わった国が殆どだ。だが、ほんの一部だけだが今も残っている国というのも存在する」
村とかそういうレベルからのスタートなんじゃないのか……? 良く存続出来るものだな。
「良く独立なんて認められたな……認められた後だって問題は山積みだろう?」
「様々な要因が重なった上での奇跡のようなものだな。まず土地の権利書の売買問題が深刻になっていた時期だというのが大きい。どこかに売られてその国と関係が悪化するよりは独立された方がゼロから関係を作った方がマシと考えたのもあるだろうな」
「そりゃそういう考えも出来るかもしれないが……普通に考えたら破綻して壊滅するとか考えるのが普通なんじゃないのか?」
勝手に独立されて、それが上手く行かなくて他の国に泣きついてきたらそれこそ厄介な問題に早変わりだからな……普通はそういうのを真っ先に心配するハズだが。
「普通はそうだろうな。そして、その予想通りに破綻した小国は多い。だが、そうはならなかった国も確かに存在する。その最大の要因が、独立を宣言した者もまた、数多くの新天地の開拓を成功させてきた実績があったからだ」
「村一つ程度の規模なら管理出来るノウハウがあったって事か……」
「まあ、それはどちらかと言うと独立が認められた要因という側面が強いがな。国として存続する事が出来たのは、やはり数多くの開拓を成功させてきた事が大きい。これは実績という意味ではなく、事実という意味でだ」
「どういう意味だ?」
「つまり、その人物が実際に開拓してきた村が存在しているわけだ。独立した国の周辺にな」
……なるほど、そういう事か。
「近隣住民との対立は少なかったわけか。いや、むしろ協力的な村だってありそうだな」
「実際にその国と友好的な関係を望む嘆願書が幾つかの村で出されたらしいな。そして、先程の話で出たシンジケートのように土地の権利書の売買で不義理を働いた事が無かったというのも外せない。もっとも、価格交渉に関しては相当揉めたようだが」
「まあ、そこは当事者の当然の権利だし関係悪化の要因にはならないだろう。それにしても、いつから独立を考えていたのかは知らないが、相当頭の良い人物のようだな」
近隣の住民との良好な関係を予め築きつつ、大国と対立しかねない要因も最大限避けている。いや、下手したら大国同士を挟む緩衝材になりかねないな。大国同士の関係が悪くても、その国を経由すれば最小限の摩擦で交易を行う事が出来るわけだ。もしそれを計算に入れていたとしたら……信じ難い頭脳の持ち主と言わざるを得ないな。




