考えられる問題
「全然大丈夫じゃなかったぞ。土地の値段で折り合いはつかないわ勝手にオークションにかけて他の国に売り渡すわで大問題が発生した」
「とんでもねえ事をしでかしたな……そんなんじゃ開拓事業なんてすぐに国の管理に逆戻りだろ?」
「ところがこの状態はかなり長くまで続いた。ある時期まで上手く行く確率が低すぎてな……土地の買い取りに失敗するリスクを考えても、開拓に成功した方がマシだと考えられたわけだ」
開拓した土地を他の国に売っても良いのかよ……まあ、国と言っても最初期の頃は主張出来る国土なんてあってないような物だろうからな。それよりも人類が生活出来る土地を増やす事が優先されたのだろう。
「そんなに失敗する事が多かったのか? ある時期までってのは?」
「国からある程度離れた場所はもう殆ど成功例が無い。ある時期というのは、その数少ない成功例が幾つか生まれて交易が行われるようになってから……より正確には、騎士様の国と賢者様の国とでの交易ルートが結ばれた時までだ」
なるほどな……国同士が間接的にでも繋がりを持つようになれば、必然的に国境線という概念が生まれる。つまりその土地がどの国に帰属しているのかが重要になる時代が到来したわけか。
「そこで今ままで見て見ぬふりをしてきた問題が一気に噴出したわけか」
「そういう事だ。最悪なのは飛び地のような状態になっていて、それらの村の住民同士での対立が激しくなっていった地域があった事だ。これはそのまま大国同士の関係の悪化に繋がっていった」
それは当然そうなるだろうな。何せ税金を納める国が違う上に法律まで違うわけだからな。国によって法律が違うなんて、実際に交易を行っている商人からしてみたら面倒この上ない話な上に、飛び地になっている土地が交易ルート上に重なっている場合、商人は最低でも三回は国境線を超える必要が出てくるわけだ。国境線付近で問題が起きたら面倒な事になるのを考えると、超える必要のある国境線なんてのは一つでも少ない方が良いに決まってる。普通なら何らかの条約を結ぶのだろうが……交易ルートそのものが結ばれた直後じゃ条約なんて結びようが無いだろうな。基本は問題が発生した後にその対策を講じるという、後手後手の話し合いになった事だろう。




