防具の水準
「何百年間も最強であり続ける魔道具が信用出来ないという話は私も同感だ。技術的進歩が無いと言われているようなものだからな。だが……これは魔王の装備品の話だからな……実際に伝説の勇者様御一行が装備していたとされている武具や装飾品に関しては、今現在でもそれを上回るどころか再現する事にも成功していない物がある」
「その言い方だと、幾つかは再現に成功した物があるという風に聞こえるが……」
「ああ。幾つかは存在する。そもそもの話、伝説の勇者様御一行の最終装備が一から十まで唯一無二の装備だったかと言われると、決してそうではないからな。そういった物に関してはより優れた物が作られているぞ」
なるほどな。確かに全部が全部特別って事も無いか。
「伝説の武具……と呼ばれるようなものは少ないのか」
「まあな。武器に関しては全て伝説のそれと呼ばれているが……防具に関してはそうでもない。勇者様の盾くらいだな」
「他はもう再現可能なのか。と言うか、防具に関しては当時の水準で戦いに挑んでいたのか……」
「いや、流石に当時の水準としては考えられないレベルの防具を身に着けていたハズだぞ? あくまでも八百年前の技術力で考えれば圧倒的というだけの話だが」
流石に世界の命運がかかっているだけあって妥協はしなかったのか。
「魔王軍から侵略を受けまくっている中で良くそんな物を揃えられたな……作ったのは侵略を受けた後だろ?」
「ああ。比較的被害の少ないところで作ったらしいが、鎧に関しては伝説の勇者様御一行の体格に合わせて作られたハズだから、相当なスピードで作られているな。もっとも、鎧に関してはそもそも旅の道中で体格に変化が生じるだろうし、何度か新調している事を考えると、最初は有り合わせの防具を身に着けて、寸法を測りなおしながら何度も改良を加えていったのだろうと考えられている。まあ、今現在の人類が確認出来るのは最終装備だけだから想像の域を出ないがな」
もしかしたら最初から最高品質の防具を身に着けていたという可能性もあるのか。普通に考えたら徐々に改良されていったと考えるのが普通だが……何とも言えんか。しかし、最終装備より過去の装備に関して特に言及も無さそうだし、やはり一般的に入手可能なレベルの防具だったと考えるのが妥当だろうな。




