信用出来る事は何も無い
「まあ、そういうわけで大国同士である程度の均衡は取れているというのが現状だ。辛うじてと言うレベルではあるがな」
「すぐにでも崩れそうな言い方だな?」
「そうだな。バカが国のトップに立ったら一気に雲行きは怪しくなるだろうな」
確かに……国が滅びるにあたってかなり高い確率で国のトップが舵取りに失敗するというのは上げられるだろうな。
「今のところとんでもないバカはトップにいないわけか」
「ああ。すでに滅ぼされてるか、大国の支配下に置かれているかのどちらかだな。……いや、一つだけあるな。その状態で生き残ってる小国が」
「滅茶苦茶辺鄙なところにある国なのか?」
「逆だ。丁度大国に囲まれていて下手に手が出せない」
「なるほど。一度でも手を出せば他の大国も押し寄せてくるわけか」
これはとんでもない藪蛇になりそうな国だな。
「ああ。今の平和がそこまで長く続かないだろうと思われてる根拠がそれだ。恐らくどこかで大国の怒りを買って、一気に崩壊するだろうと思われている。もっとも……幸か不幸か、今はそれよりも危惧しなければならない事が多過ぎてもうしばらくはこの均衡は続くだろうとは言われているがな」
それよりも優先される事項があるってのは、間違いなく不幸だろうな。
「その危惧されてる問題が解決されるかどうかにかかってそうだな」
「今のところ解決の目途はたっていないな。……と、言うよりそもそもその問題が発生しているのかどうかさえわかっていない。ほら、貴様も知っているだろう? 魔王復活だとか、その手の話だ」
「あー……あれか。確かに魔王が復活する事前提で行動を起こしている組織はあるらしいが……問題があるとしたらその組織がまともな判断力で行動を起こしているかどうかだな」
そして一番の問題はそのまともな判断力を持った上で行動しているかどうかだ。単に頭のおかしな連中が暴れまわっているだけですと言われたら一気に信ぴょう性を失うわけだからな。そして何気に厄介なのは魔界の魔物ですら魔王復活に対して否定的な態度を取ってる連中がいるという事実だ。何せ魔王が倒されてから八百年間続いていた魔界での縄張り争いがリセットされかねないとされているんだから堪ったものではないだろう。その話が本当ならば少なくとも、わけわからん信念で活動している組織よりかはよほど信用出来る情報だ。……そもそも魔物の言葉を信じるのか? という問題も発生するがな。要するに今のところ信用出来るものは本気で復活させようと意気込んでいる組織が存在するという事以外何も無いという事だ。




