回りくどい方法
「随分と回りくどいな……そんな採掘方法で採算がとれるのか?」
「利益で言えば地上の地下資源の方が遥かに上だな。だが、近年では地上の資源の採掘はどの国でも制限をかけているぞ」
「資源の枯渇でも危惧されているのか?」
「まあ、当たらずとも遠からずだな」
資源の枯渇の心配はされていないのか? その可能性が無い状態で資源の採掘量を減らす理由となると、かなり限られてくるな。
「環境汚染に対する風当たりでも強くなったか? ……いや、そんな理由だったら当たらずも遠からずって話にはならないか」
「ああ。資源にはまだ余裕はあるらしいが……だからこそ現状のうちに面倒な場所から資源を集めているらしい。本当に枯渇してからじゃ需要が跳ね上がるからな。そうなると価格はそれ以上に跳ね上がるだろう?」
「なるほどな。業者に足元を見られるわけか」
考えてみれば当然だな。自分のところで資源が取れなくなった事が他のところに知られたら、どんなに価格を釣り上げてもそこで買うしかなくなるんだから、国内の資源を枯渇させるわけにはいかなくなるわけだ。
「足元を見て来るのは資源の採掘業者だけじゃない。その設備を設置する連中も、輸送の連中も、その手のギルドは軒並み価格を釣り上げて来る。逆に国内の資源を掘ると言う選択肢があるうちはそう気軽に価格を上げる事は出来ないわけだ」
「需要が高まれば値段はあがるからな……需要が低いうちに他のところから資源を回収しようってわけか」
「その結果、採算ギリギリで資源を輸出入する事になるから景気は鈍化するわけだな。景気が鈍化すればギルド……特に建築関係は生き残りに必死になるからより競争が激しくなるわけだ」
「より安いコストで設備投資が出来るわけか……とんでもないパワープレイだな……」
下手したらとんでもない不景気になるぞ……? 仮にそうなっても生き残れるだけの体力があるという自信があるのだろうな。
「確かにあまりスマートなやり方ではないが……海底に拠点を作る技術なんてものをギルドに出し惜しみされたらとんでもない事になるからな。だから国が開発に協力するし、その資金をあてにしないと利益が出せないようにギルドを締め付けるわけだ」
……まあ、海底に基地を作る技術って事になるからな……そんなものを独自開発しまくって世界中にバラまかれたら対応が追い付かなくなるってのはわかるが……国がわざと景気を鈍化させてから資金提供する事で国内での技術力を把握しようって魂胆か。とんでもないマッチポンプだな。




