上空にいる魔物
「ああ。稀に地上に降りる事もあるが、それでも降りる場所は山岳地帯だとかそういった地域に限られると言う程高所を好む生物だ。むしろ私達人間基準での地上にまで降りると気圧の関係で体に負担がかかるらしい」
「高所……つまり低気圧や低温度に適応した魔物か……色々といるものなんだな……いったい何を食料にしてたら空を飛び続けながら繁殖出来るんだ?」
空を飛ぶのだって楽な話じゃない。まず最低でも重力に逆らい続ける必要があるんだ。それだけのエネルギーをどうやって捻出したのか? さらに言えば気圧が下がる程、空気は薄くなる。空気が薄くなるという事は翼を羽ばたかせても浮く力はそれだけ小さくなるわけだ。こうなるともはや微生物レベルの大きさじゃないと理屈に合わなくなるのだが……それが飛空艇に被害が出る程の危険生物と言われるのも釈然としない。
「その空域を漂う微生物……正確にはその微生物から生成される魔力を食料にしていた魔物が発見された。飛空艇が襲われたのもそのためだ」
「魔力を食う魔物か。確かにそういうのもいるのは知ってるが……飛空艇が襲われたのは魔力狙いとして、微生物はどうやって魔力を生成しているんだ?」
「光合成のようなものだと言われている。実際のところ、この微生物の存在は古来より予想されていたからな。それが飛空艇の発明とともに証明された形になる」
上空を漂い続ける微生物そのものはいるのか……そしてそれを主食としている魔物がいて、その魔物が飛空艇を襲うようになったというわけだな。しかし微生物の存在はずっと昔からいるだろうとは思われていたのか……なんでそう思われていたんだ?
「予想されてたって……いつ誰が予想してたんだ? 何を根拠に予想したんだ?」
「何千年も昔の偉い人達だな。雨に魔力が含まれていたりいなかったりするのがその根拠だと言われている」
「……魔力が含まれてるのはその微生物の影響によるものだって事か?」
「半分正解だが、理解としては逆だな。むしろその微生物の存在によって魔力が偏ってしまっていると考えられていたわけだ。つまり、本来ならもっと満遍なく魔力の含まれた雨が降るハズだと考えられていたわけだ。魔力が空気より重いとかでもない限りはな」
なるほどな……雨は空気中の水分だとかチリだとかが集まって落ちて来るわけだから、そこには当然それ相応の魔力が含まれてないとおかしいわけか。だが、実際に降ってくる雨には魔力があったり無かったり……これは雲の上か中に何かがいると考えたわけだな。……どうやら哲学者みたいな連中が昔からいたらしい。




