飛空艇の発明
「ああ。列車の最初の運用目的は資源の運搬だ。これによって精錬や加工の効率が一気に改善され、大量生産を可能にし国中に製品を送る事が出来るようになった。仕事が増えた事によって職人も数を増やし、鍛冶全般のレベルが上がる事により、さらに性能の高い列車を作る事が可能になったわけだ。最初期はお世辞にも褒められた出来では無かった列車もどんどん改良されて、国民の移動に使われるようになっていったわけだ」
確かに仕事量が増えていけば職人の数は自然と増えていくだろうし、数をこなしていく事で技術力も向上していく事だろう。職人の質と量が共に上がれば、より複雑な機構の列車だって作れるようになっていくハズだ。
「そこまで行けば国内の発展は目覚ましいだろうな」
「ああ。ここら辺はどちらが先かはわからないが、他国との交易も増えて行ったようだ。まあ、帝国から列車の技術を取り入れる以前から大国同士での交易は行っていたから、交易が増えたと言うよりは、需要に応えられる体制が整ったと捉える場合が多いようだが」
ここら辺は解釈の問題でしかないな。重要なのは経済が発展したかしなかったかだ。そして結果は発展したわけだ。
「まあ、そこのところはどっちでも同じだろう」
「そうだな。それで交易が活発になった事で、港も巨大な規模のものが建設されるようになり、大型の船が来るようになったし、自国でも作られるようになっていった。そういって発展していった辺りで今度は帝国が飛空艇を発明したわけだ。これが流通に革命的な進化をもたらした事になる」
とうとう空を移動経路に使うようになったか。基本的に障害物なんて概念の存在しない空間を行き来するようになったわけだから、往復にかかる時間は桁違いに短くなったわけだな。
「陸も海も障害物があったら迂回する必要があるところを、空なら飛び越えて移動出来るわけだからな……最短距離で往復する事が可能になるわけだ。問題なのは空の安全性だな」
「想像通り、空にも魔物がいる。それに魔物に襲われて墜落するような事になれば、その被害は計り知れない。単純に高い位置から落下しているわけだからな。陸路と違ってまず助からないだろう」
確かに馬車にでも乗って移動している分には、仮に魔物に襲われても助かる可能性はある。荷物は捨てて自分だけも逃げるって選択肢が選べるからな。しかし、空だとそうも言ってられん。空では逃げる場所が無いわけだ。これは海に飛び込んで逃げる事よりも生存率という点では絶望する他ないだろう。




