最初は資源の運搬
「確かに列車の導入を決定したのは比較的早い部類だったろうな。そもそも導入するのにもかなりの苦労があったからな」
「まあ、列車をどうやって自分の国まで運ぶんだって問題はどうしても出て来るからな……船でも使ったのか?」
まさか線路を敷いて走らせたってわけにもいかないだろうからな。自分の国の国内に線路を敷く前に国同士の間に線路を敷くってのは後先を考えていないにも程があるというものだ。普通に考えたら船での輸送だろう。
「いや、今現在でこそ船を使って輸送をしているが、当時は船で列車を運ぶ事は出来なかった。正確には船に積む事は出来ても降ろす事が出来なかったわけだ」
「……なるほどな。列車なんて巨大な物体を運ぶにはそれ相応の巨大な船が必要になる。そうなると今度はそれに見合った港が必要になるな。列車を荷揚げ出来るレベルのクレーンも必要になる」
「ああ。それだけの規模の港が建設されたのはもっと後の時代になってからだ」
まあ、当然の話だな。これから交易を始めましょうって国に巨大な港なんてそう都合良くあるわけがない。よほど海産物が大量にとれる海洋国家でもなければまず作られない。
「国内で列車が運行するようになって国が発展してからの話になるだろうな。巨大な港の建設なんて話は」
「ああ。そのため最初は部品単位で運んだり、技術者を呼び寄せて現地で作ったりと色々な方法で列車を配備しようといていたようだな。幸い、当初の利用方法は鉱山から発掘された資源の移動にしか使われなかったから、車内の快適性だとかそういった点は完全に度外視して作れたから何とかなったようだぞ」
まあ、最初は資源の運搬に使うのが普通だよな。
「重い物を運ぶっていうのが一番シンプルに大変な問題だからな。そこさえどうにかなれば、後は精錬なり製品化するなりで小さくまとめられるから流通させる事も出来るだろう」
それに、精錬されたインゴットにせよ、製品にせよ、送る先は基本的に市街地……それもより栄えた都市部に多くなるという事も非常に重要だ。それはつまり舗装された道路を通れるって事だからな。精錬所そのものもそれなりにインフラ配備がなされているであろう事を考えると、やはり最も悪路となるのは資源が発掘される鉱山と資源を精錬するための村までの間となるだろう。そこに線路の上を走る列車を通す事が出来れば……悪路問題は一気に解決する。結局は鉱山から取れた資源を迅速に運搬出来ないというのが国を発展させるうえで一番の妨げになるからな。




