人類の復興スピード
「小さな村や町って……そんなところにまで足を運んで知識やら何やら教えたのか? 火霊祭の優勝者がか?」
「まあ、長い歴史の中にはそういう者もいたという話だ。優勝者だけに限った話では無いがな。それから、当時の話としては村に技術を伝えに行ったというよりは、そもそも新しく村を開拓するために国からの依頼で新天地を作るという事もあったようだぞ」
世界情勢と言うか、時代背景的に国を発展させようとかそういうレベルで世界を見ていないのか。確かに一つの国が安定したとしても、その後の人口増加だとかの問題は発生するだろうから周辺の開拓は必須だ。と、言うか国の復興ってレベルじゃなくて人類の復興を目指しているんだから開拓をしなきゃ話にならないだろう。
「そうやって人類を復興させていって、デカい国同士が交易を開始したわけか」
「ああ。交易によって人類の復興スピードは加速度的に進んで行ったと言われている。そして帝国……正確には後に帝国となる国の様々な発明によって開拓スピードはピークに達する事になる。だいたい百年前には今の地図に載っている人類の生存範囲全部に人が住むようになったと言われているな」
「百年前には開拓はあらかた完了したってわけか。意外と早い……いや、時間はかかったのか……?」
「それは早いって解釈で良いだろうな」
「時期としては飛空艇が発明される頃だよな? という事はその前の発明の列車が発展の要因か」
時代を考えれば、飛空艇の発明は開拓が終わった後に作られたようだ。つまり、開拓そのものに影響を与えたわけでは無く、交易とかの物流に革命を起こして国レベルや村レベルでの発展に貢献したわけか。
「列車の発明が開拓に与えた影響は大きいだろうな。これで国内……特に帝国国内の物流は桁違いのスピードになっていったからな」
「流石に当時は国内線だけか。まあ、線路を敷くのにだって安全確保が大前提になるわけだしな」
線路上に魔物が出現しますじゃ列車なんて走らせようが無いからな。当然、最初は安全が確保された国の中だけで走らせたのだろう。それだけでも物流としては革命的な進歩を遂げたハズだ。
「線路なんてどこか一本でも折れていたら大事故の原因になるからな……魔物が出るような地域には通せんよ。そういう意味では列車は安全と繁栄の象徴として見られる場合がある」
「お前の家にも保管されてあるらしいしな。列車」
「ああ。どちらかと言えば、列車そのものが安全と繁栄を象徴するものなのではなく、列車が運行する場所こそが安全と繁栄を約束された土地だと言えるわけだがな。耐用年数を過ぎた列車が存在する事そのものがその土地の繁栄を表すのだとすれば、確かに保管しておく価値はあるだろうな」
確かに何十年という間、その列車が大破するような大事故は一度も発生していないと解釈する事も出来るわけだからな。




