それぞれの発展理由
「……まあ、そういうたらればを言い始めたらキリが無いな」
「そうだな。……とにかく、あの二つの国が最初に復興を開始して、交易もするようになった。するとそのルート上に幾つかの村を作ってそこに人が集まるようになって……徐々に人々の暮らしが回復していったわけだ」
「自然な流れだな。物流があれば人は集まるし、交易ルートを魔物から守る目的でも人は多くいた方が良い。というか中継地点が無いと輸送隊が消費する物資の量が跳ね上がるからな」
物資の輸送で最も重要なのはコストだからな。物資を魔物や賊の類に奪われる事を考慮すると、護衛を連れて行く事になる。この際に護衛を雇う費用を度外視したとしても、厄介な問題になるなのは護衛達やそいつらの分の食料を載せればその分だけ一度に運べる物資の量が減るという事実だ。当然、物資を運ぶ人間だってものは食べるからな。
「確かに輸送隊が輸送物資を消費するというのは避けられない命題のようなものだからな」
「だから交易ルート上付近には村や町が作られるわけだ。中継地点として利用出来るからな」
輸送隊が消費する食料を現地で調達出来るって時点で輸送のハードルは一気に低くなる。輸送している物資に手を出さなくて良くなるんだからな。……そういう意味では、村や町が作られるまでの間は相当な地獄だっただろう事は想像に難くない。
「……で、二国間を結ぶインフラが整って来た後に賢者様の故郷であるこの国との交易が行われるようになっていったわけだ。その後は私達が暮らしている国だな。この国との交易が本格的に始動してからの発展はかなり著しいものだったようだぞ? その後十年も経たぬうちに我が国との交易が始まったからな」
「そりゃあ、三つの国が直線状に並んでいない限りは三角形を描く事になるからな。この三角形の中心にある町が、三国のどれかと交易する事が可能なら、理論上その三角形の中の範囲に作られた村は全てどこかの国と交易をする事が可能な理屈になる。ここまで来れば発展はかなり楽になるからな」
まあ、それが実現するまでの間、この国の人達はどうやって発展していったのか甚だ疑問だがな。それだけ賢者様が途轍もない能力を持っていたという事か?
「確かに中継地点が発展すればするほど、輸送にかかるコストは安定するからな。大規模な国同士が結びつく事で互いに発展していったわけだ」
「そういえば、四大国の他に帝国も大国にのし上がって来たんだよな? いつどうやってそんなに発展したんだ?」
「ん? あの国が発展したのは二百年程昔だ。発展理由は一言で説明すれば列車や飛空艇を開発したからだ。……まあ、列車と飛空艇と言っても発明は百年近く離れているがな」
長距離移動が可能な機械を発明したのか……そりゃあ天下も取れるな。




