危険を顧みない場合
「ああ。時間短縮を目指すならば、参加者は一人でも少ない方が望ましい。……が、さっきも言った通り上の順位に行けば行く程、一つの順位差が生み出す格差は如実に大きなものになる。その最たる例が一位と二位の差だな」
確かにこれには異論は無いな。優勝と準優勝とでは雲泥の差があるだろう。
「一つでも順位を上げるために、危険を顧みずに競技に参加するかもしないって事か?」
「そうだ。そしてそうなると、先ほど貴様の言った事が大きな問題になってくるわけだ。つまり、これからの国を背負っていくであろう人材が致命的な大怪我を負う危険性だ」
「国からしたら堪ったものじゃないな」
将来有望な魔術師が後遺症が残るレベルの怪我を負って帰還して来たら、国からしてみたらこれ以上ない損失だろうからな。
「自己責任と言われたらそれまでだが、それでも、運営の管理法に問題があったとなれば話は別だ。無謀なスケジュール調整の結果、問題が発生したとなれば国は泣き寝入りなどせんし最悪、国際問題にまでなりかねん」
「まあ、それくらいの事は起こるかもな。杜撰な管理は出来ないわけだ」
ここら辺は大惨事となる事故や事件でも発生しない限りはそこまで大問題にはならないとは思うが……それだけに万に一つでも問題が発生でもしたらとんでもない事になるわけだから、大会の運営委員もそこら辺は全力で取り組むだろう。
「しかし、ここで問題になるのはあまり温い競技内容だと持久戦になったり、判定を出す事が困難になる可能性が高いという事だ。もっとも、競技内容が苛烈である事そのものに異論を唱える者は少ないという前提はあるがな」
「競技が過酷である事そのものに対しては甘えるなと言えるわけだな。しかし、競技の合間……休憩時間やら何やらでの不手際に関してはかなり突っ込んで来そうではあるわけだ」
超過密スケジュールだとすると、係員の不手際は発生しうるハズだ。その不手際が一部の選手に有利に働いたり、或いは逆に不利に働いたりすると……非常に厄介な問題になるわけだ。




