正気の沙汰ではない短さ
「二日で終わらせられると発言した人物がそのまま責任者に任命されたって事は、他の候補者は後追いをしなかったって事か?」
「ああ。それ以外の候補者は全員、三日はかかると考えていたようだ」
「三日か……実際にそれくらいはかかるものなのか?」
「そうだな。まず初日で一気に百人にまで絞り込むというのがかなり珍しい。他の候補者の計画では、初日は五百人にまで絞り込んで終了。二日目の午前中に百人にまで絞り込んで、午後に五十人から三十人程度まで数を減らして……残りを最終日である三日目に行うというのが一般的だ」
なるほどな。確かに大台が関わって来るところではどの選手だって全力を出し切りたいだろうから、一晩休憩を挟んで二日目の最初の行程にしてほしいところだろう。
「残り三十人を一日かけて最後の一人まで絞り込むというのは、スケジュール的に考えて短いのか?」
「かなり短い部類だな。その辺りまで行くと順位が一つ違うだけで国のパワーバランスに影響を出し始める」
「じゃあ、一日で百人分の順位を決定しようってのは……」
「正気の沙汰じゃないな。そもそも全競技が終了した後の閉会式やらを考えたら最終日の夕方には全てが終わっている必要があるのだぞ? そんな僅かな時間に百人分の順位を決めるなんて方法があるとは思えん。噂では……相当血生臭い競技が行われるのではないかと言われているがな」
血生臭い……か。確かにそれくらいの勢いで人数を減らしていかないと一日で百人に順位を付けるなんて事は出来そうにないか。
「それくらいの事をしなければスケジュールに間に合わないという事か。少なくとも持久戦は無さそうだな」
「ああ。午前中に五十人どころか三十人にまで絞り込まないと、とても間に合いそうも無い。むしろそれでも短過ぎるくらいだ」
「なら、出場を辞退して貰うのが一番望ましいな。上の順位に行けば行くほど、これからの国を背負って行く存在になるわけだろ? 今後の選手生命に関わる程の重傷を負うかもしれないと思えば、出場を辞退する選手も多く出て来るハズだ。選手の絶対数が減れば、その分だけ時間は短縮出来ると思うが」
限られた時間の中で目的を達成するには、行程の数をどれだけ減らすにかかっていると言っても過言では無い。それなら参加人数をとにかく減らす事に注力して、棄権した選手の順位は同時進行で決めていく事になるだろう。




