負けるようにはしないハズ
「こっちの国の選手が自然公園に侵入してアイテムを埋めていたらだと? その場合は決まっているだろう。何も見なかったことにする」
「それがバレたら共犯になるんじゃないのか……?」
「そこはバレないように気を付ければ良いだろう。……まあ、やるべきではないだろうな」
流石に無理があると思ったのか、オリヴィエは大人しく引き下がった。
「それが良いだろうな。そもそもの話、ここから公園までの移動だって誰かに見られる可能性があるんだ。やはりこの部屋から一歩も外に出ないくらいの方が良いだろう」
俺達が審査官をやっているのは他の誰にも知られてはいけない事だからな。外どころか、このホテル内でも誰かに見られるという事は控えた方が良いハズだ。
「そうすべきだな。結局のところ、リスクのある行動を取るのであれば、明日の競技にアイテムの持ち込みが認められているのかどうかを確認してからでも遅くは無いだろう」
「少なくとも、選手達よりかは早いタイミングで聞かされる事になるだろうからな。多少でも時間があれば、何かしら出来る事はあるだろう」
選手達より長い時間、作戦を考える時間が与えられているのだから、多少はこっちの方が有利か。
「出来る事があると言っても、アイテムの持ち込みが禁止されたら、どうやってバレずに持ち込むかって話にしかなってなかったぞ。まあ流石にアイテムの持ち込みくらいは許してもらえると思うっているがな。そうでないと、審査官として呼び出したメンツに違和感が出て来ることになる」
「違和感?」
「ああ。道具や武器を使って戦う魔術師がかなり多くいた。これは当たり前の話だが、使い慣れている方が高いパフォーマンスが期待出来る」
初めて使う道具よりも、普段から使い慣れている道具の方が戦いやすいハズだ。わざわざ俺達に不利な条件を付ける意味も無いか。
「道具が無いと戦力としてガタ落ちの者がいるのに、わざわざ道具の持ち込みを禁止する意味が分からんな。それではせっかく呼んだ魔術師達に、何もするなと言っているようではないか」
「単純な人数合わせというわけでもなく、本当に参加選手……その中でも盤石に競技を通過出来るであろう選手を倒す事が狙える魔術師を呼んでいるのだ。少しでも選手を倒せるように配慮するような事はあっても、その逆……負けるようにはしないハズだ」
これはその通りだ。審査官がやられ役で良いなら、わざわざ世界中から審査官を集める必要性なんて無いのだからな。大会運営の中の人員だけで間に合うだろう。しかし、それをしなかったという事は、それだけ大会運営も上位百名の選抜を予定調和で終わらせるつもりは無いという強い意志を持っているという事だろう。




