選手の立場なら
「確かに、せっかくアイテムを埋めたまでは良くても、その埋めた所まで辿り着けるかどうかは賭けになるな。だからその確率を少しでも上げるために複数の場所に埋めるという方法がある」
「一つの場所に埋めるだけでもリスクがあるのに、別の場所にも埋めるのか? リスク倍増どころの話じゃないぞそれは。しかも、運営がアイテムの持ち込みを認めれば全部の仕込みが無駄になるんだろ? どう考えても、リスクとリターンが釣り合っていないぞ」
せっかく埋めたアイテムを回収出来ないリスクを回避するために埋める場所を増やすなんて、それでは回避どころかかえってリスクが増えてしまっている。
「まあ、そこはどれだけ裏目を引きたくないかだな。万に一つの可能性を考えれば、埋めておきたいハズだ。選手という立場ならばな」
「俺達は選手じゃなくて審査官だ。それに、選手だって自然公園で競技が行われるかどうかの確信は持っていないハズだ。リスクを回避するための行動だと? とんでもない……むしろ自分の読みに全てを賭けた一世一代の大博打になってるぞ。まあ、もっと後の事を考えての行動であるかもしれんが」
……まあ、あり得ない話じゃないな。あの競技を突破出来るか否かで今後の人生に大きく影響を与えるのならば、一世一代の大博打に打って出る価値はあると言えるだろう。それに、明日自然公園で競技が行われる事をピンポイントで読み切る事は不可能でも、大会の何らかのタイミングで自然公園が使われる事を予想する事は十分可能だ。それは大会が終盤に向かうにつれてより効果的になってくる。つまり、明日の競技……よりも先を見越して仕込みをする選手はいてもおかしくは無いかもしれないな。
「つまりはあってもおかしくはないという話だろう?」
「選手目線ではな。審査官がわざわざやるような事では無いな」
「それはそうだな。まあ、仮にやるとしても、今から外出するというのは不味いだろうな。誰かに見つかって誤魔化すにしても、閉館時間を過ぎている自然公園に侵入する言い訳に観光と言うのは少しキツいか」
「少しどころか相当無理があるな」
まず警備が厳重なところに侵入してるって時点で論外なところがある。バレなきゃ良いの理論で行動に移すにしても、そもそも全部読み通り上手く行ったとしたら、それはつまり埋めたアイテムを使用してるって事だからな。そこを指摘された時に偶然拾ったは流石に通らないだろう。




