リスクとリターンが見合わない
「トップ層との戦いは避けるという前提で作戦を立てるとして、やはり潜伏と索敵を最優先すべきだな」
「潜伏と言えば、迷彩服の持ち込みはありなのか? 他にも身を隠す道具は色々とあるが……」
俺は持ち込める道具について質問した。事前の打ち合わせでは特に何も言われなかったが……明日、会場で競技の細かいルールを教えられるからまだ教えてないと言われたらそれまでだが、その場で初めて持ち込める道具の説明を受けたとしても、実際に持ち込むにはかなりの時間が必要になる。一度ホテルに戻るというのは二度手間じゃないか? かと言って、何を持ち込んで良いのかもわからない段階で会場に全ての荷物を持ち込むというのも無駄が多い。
「特に何も言われていないから何を持ち込んでも良いのだとは思うが……明日の説明を聞かない事には何とも言えんな。ただ、選手だけで五百人参加する競技の持ち込みのアイテムを全てチェックするのは現実的では無いから、何でもありか一切禁止かのどちらかになると思うぞ」
全部許すか一切許さないかの二択か……極端だな。だが、それが一番楽な話ではあるな。
「一切禁止ならそれで話は終わりだから、ありの方向で考えるべきだな」
「いや、一切の持ち込みが禁止だと読むのであれば、持ち込むために一つだけ取れる選択肢があるぞ」
「持ち込み禁止なのに持ち込む? ルール違反だろそれは」
「ああ。だが、事前に持ち込んでおくのであれば、違反にならない可能性がある」
「……今夜国立自然公園に忍び込んで道具を地面にでも埋めるって事か?」
突然、突拍子も無い意見が飛んできたな。
「ああ。それならルールに違反せずにアイテムを持ち込むことが可能だ。当然、他の審査官も選手達も同様の事を思いついているだろうな」
「……色々と問題が多過ぎるだろう。まず単純に今夜の自然公園なんてまず間違いなく見張りが多く配置されているハズだ。その人達にバレないように道具を隠すなんて真似、そうそう出来るものじゃないぞ。それに、埋めたまでは良い物の、競技中にその埋めた場所まで行けるかどうかも賭けになるぞ」
リスクに対してリターンが小さ過ぎるな。他の選手や審査官と鉢合わせになった時に大問題に発展しかねない。相手が選手だとすると、お互いにどう動くべきかわからなくなる。




