優先される可能性
「戦わずに済めば運が良い……か。まさしくその通りだな。如何に運営が番狂わせを期待しているからと言って、最後の五人以内にまでは確実に残るであろう選手を脱落させるなんて事までは期待していないだろうからな。下手にそんな選手に挑んで何の成果も無く敗れるくらいなら、もっと下の順位の選手を脱落させてくれた方が運営と審査官両方にとっても得だろう」
「いや、それで割りを食う選手にとってはかなり損しているだろ……」
まあ、俺達が選手の心配をするってのがそもそも微妙な話ではあるが。
「選手の事を気にかけても仕方あるまい? 言ってみればそれが私達に与えられたミッションなのだからな。……しかし、私達が担当するブロックに優勝経験者がいる可能性か。言われてみるまで欠片も想像していなかったな……確かに十分あり得る話だ。いや、むしろ優先して入れられる可能性まである」
「優先? 俺達と戦わせようって魂胆か? 確かに優勝者同士の戦いになるから注目は集めるだろうが……実現するかしないかは当事者である俺達の行動次第だろ?」
確かにあえてぶつける価値は大いにあるだろう。だが、だからと言って俺達が馬鹿正直にぶつかるとは限らない。
「勿論それも大いにあるが、それ以外にもこちらが大国だからという点もある。いくら勝ち上がるのがほぼ確実だとしても、だからと言って弱いブロック……せめて審査官くらいはまともなところに入れないと無気力だと批判されるからな」
優勝経験者は弱いところに入れてさっさと勝ち上がりを確定させてしまってもルール上問題無いって事か。言われてみればその通りだし、運営としてもどうせ突破されるんだからと考えればその方が楽だろう。……が、それで皆が納得するかと言われたらそうはならない事が予想される。そんなものは他の選手達や観客からしてみたらただの接待にしか見えないからな。
「審査官とは名ばかりで、一部の選手は最初から審査する気はありませんってのは……通らないだろうな。せめて最低限度その気はあるってポーズだけでも見せないと後で何を言われるかわかったものではないというのは……恐ろしい話だな」
「その点、私達なら彼らを審査するために最大限努力したと、運営なりにやれる事は全部やったと主張出来るからな。これで三人の内の一人は何とかなる」
流石に優勝経験者全員同じブロックにぶち込むなんてアホな事は出来そうにないか。残りの二人も似たような感覚でどこかに入れれば……とりあえずは形になりそうだな。




