確認する時間も惜しい
「索敵の範囲で考えれば、向こうの方が圧倒的に上である可能性は高いな。……とは言え、魔法には向き不向きと言うものがある。上位であっても使う事の出来ない者は普通にいるだろうから、そこまで気にする必要も無いと思うぞ」
まあ、確かに全員が全員使えるとは限らないな。むしろ上には上がいると考えればその分野を伸ばさない事を選択した選手がいてもおかしくは無いハズだ。それに、いくら多彩な才能を持っている事が火霊祭で優勝するためのコツだと言っても、全員がみんな同じ魔法を使えると考えるのも変な話だ。
「上位陣でも出来ない奴は出来ないって事か。しかし、あまり期待しても意味の無い話だな。相手がこちらの位置を察していない可能性があり得るから慎重になり過ぎてはならないという話にはなるが、かと言って楽観的に気が付いているハズがないと考えるのは軽率が過ぎる」
「勝負を仕掛けて勝てるのか否か。そこの判断を間違えれば返り討ちに遭うか、もしくはせっかくのチャンスをみすみすフイにするかだ」
結局のところ、重要なのは的確な判断力という事になる的確な判断を下すにはより深い知識が求められるが……そんな膨大な知識はあいにく俺は持ち合わせていない。……その知識を補うには……やはり事前情報が必要になる。火霊祭参加者のデータは事細かく記載された資料をオリヴィエが持っているだろうが、問題なのはそれを読みながら状況判断をする余裕が競技中の俺達にあるのかと言う点だ。
「参加者のデータが記載された資料を持ち込むのはありだろ? 競技中にそんなものを確認する余裕があるのかどうかを考えさえしなければの話だが……」
「一応、罠を仕掛けて待ち伏せするという作戦を取るのだから、資料を確認している時間はあるハズだな。問題なのは、偶然近くを移動している選手を見かけた際に、すぐに資料からその選手のページを開く事が出来るかだ。そこに手間取れば勝てる相手にも勝てなくなるな」
確かに……それでは明らかに無駄な時間がかかってしまう。ある程度の情報が頭の中に入っていない事には避けられない問題だ。しかし、かと言って実際に俺達が戦うという時までの間に資料の中身を暗記して理解しているレベルにまで到達出来るかと問われると……まず不可能だろうな。そしてそれだけでなく、過去のデータなど一切存在せず、今年初めて火霊祭に挑戦する天才だとかの存在も考えるとすると、仮に資料の中身を丸暗記出来ていたとしても懸念点は残るな。




