特化型にもタイプがある
「万能タイプ……まあ、その通りだ。多種多様な魔法を扱えて、それらを適切に使える魔術師が優勝出来る大会だ」
「極一部の例外ってのは、一つの魔法で優勝するような魔術師って事か? そんなのがいるのか?」
「極論を言えば、そういう事になるな。まあ、一つの魔法と言っても、その一つの魔法で何でも出来るタイプと一つの事に特化したタイプで分かれるのだが……」
一芸特化の優勝者もいるのはいるのか。それにしても、一つの魔法で何でも出来るってのはどういう意味だ?
「一つに特化してるってのは想像しやすいが、一つの魔法で何でも出来るってのはどういう状態なんだ?」
「例えば、土属性魔法で地下資源を生成して必要な物をその都度作り出すみたいな魔術師の事だ」
「……鉄を生成して精錬するって事か……? いったいどれだけ時間がかかるんだそれは?」
確かにそんな事が出来るんなら何でもありな魔法だが……実際にやるのはかなり荒唐無稽な話になってきそうだな。どんなに優秀な鍛冶師でも一人でそこまでの事が出来る奴はそうはいないだろう。
「鉄で例えるなら、精錬されたインゴットと同等レベルの純度で洗練されたデザインの鉄製のオブジェそのものをその場で作れるようなものだ」
「魔法でその段階の物が作れるのか? もはや職人とか必要ないってレベルだな……」
「そりゃあ世界最高峰レベルの魔術師の話だからな。世界にそう何人もいないレベルなんだから、そんな人物を根拠に職人は不要という結論にはならんよ」
まあ、職人がいらないなんてセリフは世界中に存在する職人全員分の生産能力を持っていない限りは成立しない話だな。
「まあ、必要不要なんてのは需要と供給が決める事だしな。天才一人が世界に供給する量が世界全体の需要を満たすレベルでもない限りは必要性はあるだろうな。そして、職人が現状いなくなっていないって事は、そこまでの供給量では無いって事か」
「当然だな。そもそも天才の貴重な時間を奪う事になるんだ。価格の方だって桁が違うぞ。文字通りの意味でな」
桁違いの値段か……まあ、そういう事になるだろうな。貴重な物ほど欲しがる奴が増えて高値が付くのが世の中の常なんだから、シンプルに物としての値段とは一線を画す事になるだろう。




