大規模な魔法は使わない
「お互いが死角を補えば……なるほどな」
「複数人で担当する戦場を常時チェックし続けて、戦闘の状況を監視していれば得点の管理は不可能ではないだろう。まあ、問題もあるがな」
「問題と言うと?」
「参加者は全員索敵魔法にさらされ続ける事になる。これが魔力感知のノイズになる可能性があるわけだ」
常に監視され続けているせいで、他者からの視線を感じる状態が続いて、他の選手からの視線に気付き難いって事か。
「魔力から敵の位置を読み解こうにも、運営の張っている魔法の方を感知してしまうわけか」
「その通りだ。もっとも、そういった微弱な差異を識別するのも実力と言える部分もあるからこればかりは何とも言えんがな」
「とにかく、フィールド全体を把握する手段は、あるのはあるんだな?」
「ああ。十分可能だ。だが、所詮は人間の認識だ。その限界を超えた識別は出来ないと言われている。例えば目にも写らぬ程のスピードで移動されたり、攻撃の応酬が行われたりすると判断は出来なくなるハズだ」
まあ、当然と言えば当然の現象ではあるな。
「……当たり前と言われたらそれまでだが……参加者は世界最強候補の魔術師が集まってるんだよな? 普通に認識不能の戦闘が行われたりするんじゃないのか?」
「それはありえるな。しかしだぞ? 私達が出る競技は初日の最終競技だ。それ以降の事を考えれば魔力は温存しておきたいだろうし、競技の目的だって上から数えて百番以内に入れば良いだけのものだ。そこまで本気で戦わないと思うぞ?」
「わざわざトップ層同士で潰し合わないってわけか。まあ、潰し合わないようにするために結託する可能性があるって話だったからな。大会の運営が認識出来ないような大規模な魔法は使わないだろうし、使う相手もいないってわけか」
まあ、雑魚を蹴散らす目的でぶっ放す可能性は無きにしもあらずだが、それはそれで運営としてはわかりやすい結果が出力されるだろうからな。それで運営の管理方法が破綻するって事は無いだろう。強いて問題を上げるとすれば、その大規模な魔法に巻き込まれて戦場全体を観測していた運営お抱えの魔術師が全滅してしまうような事故の発生くらいか。




