不確定要素
「私達審査官の出場する目的が上位層の脱落である以上、他の選手の策にまんまと乗せられるのもアリというわけか」
「ああ。それで目的が達成出来るなら安いものだろ」
結局のところは、上の順位の奴らが脱落してくれない事には会場は盛り上がらないわけだからな。それを実現するためには、いかにして俺達審査官という、不確定要素を味方につけるかと言う点も勝負の分かれ目になって来るハズだ。
「まあ、安いと言えば安いだろうな。だが、その可能性は逆も当然ありえるだろう? つまり、上位陣が楽に勝ち上がるために私達を利用してくる可能性だ」
「それは勿論あるな。そしてこれの対処法は選手達の掌の上で踊らないように慎重に行動する他ないな」
「しかし、そう簡単な話でもないだろう? 単純に相手の思惑の逆張りをすれば良いというわけでもないだろうし……」
「逆張りを読まれて逆にまんまと良い様にしてやられるって可能性もあるな」
相手の思惑に乗らない。……と、口にするのは簡単だが、それを実現するのはかなり難しいと言わざるを得ないな。そもそも相手がこちらより二枚も三枚も上手だったら、こっちは上位陣を倒すために行動しているつもりなのに、逆に相手にとって都合の良い行動をさせられている可能性もあるわけだしな。
「そんなもの、私達が読み解けるわけがないな」
「ああ。俺達が認識出来ない程の卓越した策略で良い様に動かされる可能性があるのだから、俺達は自分がベストだと思う行動を取り続ける必要がありそうだな」
正直な話、この辺りの戦場のコントロールに関しては毎年参加している上位の常連の方が一日の長があると言えるだろう。番狂わせが起きるとしたら、俺達審査官と言う、本来ならば出場する事も無かったような戦力の投入に関してだ。この不確定な要素をいかに上手く利用できるかに勝負の行方はかかっているな。




