原理原則から難しい
「ああ。終盤になって各選手が膠着状態に陥る事は確実に避けられない。その状況を破るために俺達審査官が必要なのだろうが……そこまで行くと俺達の中でも動ける人間が何人残っているのか不明確だ。さらに怪我をする可能性だってあると考えれば、終盤になっても精力的に戦う奴は一発逆転を狙うしかない下位層だけになるハズだ。ならば、序盤中盤で可能な限り上位層が倒れる事に賭けるしかないだろう」
どう考えても、審査官が最後の最後まで全力で戦い続けるとは思えん。そこまでする気力と体力を保てる奴が何人いるんだという部分も含めて甚だ疑問だ。
「だから懸賞金システムか。確かに全選手を一律同じ報酬で統一したら倒しやすい選手を効率良く倒す競技になってしまうからな。これは早く競技を終わらせるためには十分な効果だと言えるが……番狂わせは逆に起こりにくくなってしまうな」
「ああ。リスクのある行動を取るだけのリターンが無いからな。契約上問題の無い戦い方だけをして競技が終わるのは目に見えている。そういう意味でも上位の選手に高い懸賞金を設定するのは理に適っている。……もっとも、原理原則から考えて本来全員が対等であるハズの選手達に不平等な懸賞金を設定するのは大会の運営としてどうなのかという問題は発生するわけだが」
ネックがあるとしたらこの不平等な部分だな。こればかりは意図的に作らない事には単なる予定調和に終わる事になるし、かと言ってこんなものを容認するかと言われたらそんな事は絶対に無い。こんなものはどこまで行っても大会運営の都合でしかなく、高い懸賞金を設定される……つまり、ランキング上位を狙える選手を抱える国にとってはわざわざ枷を付けるようなものだ。とても容認出来る代物では無いハズだからな。
「まあ、冷静に考えればあってはならない事ではあるな。だが、その前の段階で行われた審査で特に優れた結果を出して通過した選手だとか、過去に上位に入った経験のある選手に対して高く評価する事に関しては矛盾しないようにも思えるがな」
