2:6:2の法則
「……まあ、俺達が頑張って上位の連中を倒しても、結局次の競技に行ける奴は顔も名前も知らない奴って可能性は高いからな……だが、その理屈で言えばお前はどうなんだ? 俺達が仮に上位勢の誰かを脱落させた事で繰り上がる奴がいたとして、それがお前の知り合いである可能性ってのはどれだけあるんだ?」
俺達が明日審査官として出る競技は、五百人の中から百人が通過する事が出来るという狭き門だ。それも国の中からとかではなく、世界中から集められた選りすぐりの魔術師五百人の中からの百人だ。そんなのがそうそう身近にいるとは思えないが。
「可能性で言うなら、山ほどいる。それこそ単純な実力で考えても百人近くな」
「そんなにいるのか……!? 流石に言い過ぎだろ……?」
「いや、そこまで言い過ぎでもない。例えば、学校の入学希望者の偏差値にはそのランクによって幾つかの集団……グループが出来るのは知ってるか?」
「……ああ、合格するために猛勉強するグループと、そんな事をしなくても十分合格を狙えるグループだろ?」
言い方は悪いが、その学校への合格を目標に頑張る奴と、その学校への合格で妥協する奴と言うのは確かに存在するだろう。そして、その両者の学力を比較すれば……確実に一定以上の差が存在しているハズだ。
「その通りだ。百位以内に入る事を目標に努力している者と、とりあえず百位以内に入る事を目標にしている者とでは実力に開きがあって当然だからな。この場合、百位以内に入れる事がほぼ確実視されている数十人は確実に存在している事になる」
「まあ、いるだろうな。上澄みの中の上澄みって連中だ。そして、それより少し落ちる実力の連中が残った椅子の奪い合いをしているってわけか」
「そうだ。確か……2:6:2の法則とか言ったか……? 上位二割と中間層六割……そして下位グループが二割だ。五百人の選手の中から百人の通過者を出すという根拠がこれに当たると言われている」
「そういう理屈で人数が決められていたのか……? 中々残酷な事をするものだな」
「だが、その上位二割というグループが綺麗に丁度二割いるというわけでは決してない。むしろ生き残った百人の中にも2:6:2の法則は適用されると聞く。何が言いたいかと言えば、上位百名の内、二十名は偶然勝ち上がれただけの可能性が高いという事だ。逆に言えば、偶然勝ち上がれなかっただけの選手も似たような数いる。これに能力と競技の噛み合いも加味したら……百人という数もあながち言い過ぎではないわけだ」
ゲームとかで良くあるランク帯って奴だな。実力をレートで数値化して、その数値の近い奴同士がマッチングするようにしているわけだ。当然、各ランクには調子が良くてそのランクにいる奴と、普段からそのランクにいる奴と、調子を落としてそのランクに下がった奴がいる。詳細なデータなんて調べた事も無いが……恐らく似たような比率でいるのだろう。




