リスクを取るモチベーション
「機動力の観点で考えるなら、瞬間的な最高速度や加速力に優れている生き物は捕食者側に向いている傾向にあるから、お前は逃げるより追いかけ回す戦い方の方が向いているだろうな。逆に長時間の高速移動を持続出来る奴なら逃げ回るのが向いているんだが……今回に限っては考えなくて良いか」
細かいルールがまだわからない以上、オリヴィエは攻撃する側に回ってもらう方が良いのだが……その場合でも獲物が近づいてくるのを待つタイプか、積極的に獲物を探し回るタイプかで話は変わってくる。
「まあ、私の攻撃範囲より遠くから攻撃を受けていたら、どうにかして距離を詰めない限りは一方的に攻撃を受け続ける事になるからな……防御に回っていたら上位勢にほぼなすすべなく負けるだろうな」
「上の連中を相手に勝つ算段を考えるのも大切だが、それよりも互角レベルの相手をいかに効率良く倒せるかを考える方が審査官に求められる働きに貢献出来ると思うが……」
「さっさと仕事を終わらせるならそれで良いが……観客が求めているのは番狂わせだろう? 格上を倒す事を考えた方が良いんじゃないのか?」
上に行ける連中は俺達の行動に関係無く上に行ける……と、考えるなら俺達が最優先してやるべき事はさっさと脱落者を量産して決着を早める事だ。だが……オリヴィエの言う通り、上位勢を一人でも多く倒せればそれだけ見返りも大きい。会場も盛り上がるだろうし……何より蹴落とされた事で空いた椅子に他の選手が座れる事になるからだ。これはそのままこっちの国の選手にとって、チャンスが増える事に他ならない。
「お前の意見も一理あるが……普通に返り討ちにでも遭ったら意味無いんだぞ? わざわざリスクの高い行動を取る必要があるのか? いくら観客がそういうのを望んでいるとは言えだ」
「しかし、上が一つ消える事で上へ繰り上がれる者が一人増えるのも事実だろう? まあ、こっちだと知り合いが少ないであろう貴様にとっては希薄にならざるを得ない話だとは思うが……」




