警戒は薄れていく
「……となると、やはりどれくらいの人数でどれだけ広い範囲で戦わされるのかが重要になってくるな」
そう言いながらオリヴィエは地図を眺めながらある一か所を指さす。
「そこは?」
「背の高い木が生えている場所だ。木の上に登って身を隠せばちょっとやそっとの事では発見されなくなるだろう。場合によっては索敵魔法も掻い潜れる事も期待できる」
「索敵魔法も? どういう事だ?」
「索敵方法にも幾つか種類はあるが……自分を中心に真円を描くような索敵範囲を持つ魔法はかなり珍しい部類に入るからだ。つまり真上や真下が死角になっている場合が多いわけだな」
「そうだったのか……しかし、何でそんな死角を作るような魔法を……?」
真上や真下なんてモロに人間の死角だろうに、何故そういった方向への索敵が珍しくなるんだ? 技術的に難しいって事か……?
「それは単純に使い道があまり無いからだ。上空の敵を見つけ出す魔法を鍛えるよりも、背後の敵の位置を把握する魔法を身に着けた方が使い道は多いからな」
「……上や下から攻撃が来るよりも、背後から攻撃を仕掛けられる可能性が高いってわけか」
「後は曲がり角の向こう側とかだな。なんにしても、自分との高低差を考えない索敵が主流になっているぞ」
「まあ、背後からの攻撃が一番狙われやすいし、警戒すべき攻撃だからな……真上や真下はそこまででもないって事か」
基本的に真下なんてのは地面や床が存在しているわけだから、そこから攻撃を仕掛けるにはまず大前提として落とし穴だとかで地中に何かを仕掛けるか、自分が地中に潜るかする必要があるわけだ。上空だって、自分自身が空を飛べない限りは天井の上からでもない限りは上から攻撃なんて仕掛ける事は難しいだろう。難しいって事はそれだけ頻度が減るという事だし、頻度が減れば減る程、警戒する必要性は薄れていくわけだ。




