脱落した方が盛り上がる
「なるほどな……陣地の奪い合いになるのはむしろ好都合というわけか」
「ああ。他の誰と手を組むのも何でもありなら、展開は予想もつかないな。そこに俺達審査官が場をかき乱す目的で行動すれば……途中での中だるみはあるかもしれないが、かなり戦況を動かす事は出来るハズだ」
勝ち残れるのは百名のみ……この条件で考えるならば、徒党を組むにしてもその人数はある程度絞れるハズだ。じゃないと仲間内での潰し合いが競技中に発生する危険性があまりにも高すぎるからだ。何せ競技が終わったその後で潰し合いをするくらいなら、競技中に仲間を裏切って自分の順位を一つでも上げてしまうのが一番手っ取り早いからな。……が、これは徒党を組んで有利な陣地を取っている他の選手からしてみたら、自分が裏切る側ならともかく、普通に考えれば可能な限りそういった事態は発生しないように……徒党を組む人数は慎重に決めているハズだ。万に一つ、盤石な優位を保てた状況で仲間内での潰し合いが発生しようものなら、他の選手に付け入る隙をわざわざ見せている事になるし、競技を通過するために徒党を組んだのに、徒党を組んだせいで他の関係無い選手に出し抜かれていては本末転倒も良いところだろう。
「……運営からの基本方針にもよるが、もしかしたら選手と一時的に手を組んで戦う事もありえるのかもしれないな」
「……ありえるな。大会を盛り上げるなら、優勝候補の早期脱落はあった方が盛り上がるからな。優勝候補が脱落してくれるなら、他の選手にとっては自分が優勝する可能性がその分高くなるわけだし、俺達審査官からしてみても、自分達が相手をする優勝候補が脱落してくれれば、その分だけ他の審査官と戦っているであろうこの国の選手の順位が一つでも上がる手助けに繋がるハズだ。つまり、一時的にだが利害が一致する瞬間はあるわけだな」
優勝候補が一人でも減ってくれれば、その分だけ他の国の選手が優勝する可能性が高くなっていくわけだ。これはお互いにとって、目の前の強敵を倒したいという点で協力し合えると言える。そして俺達の事を裏切るメリットは……運営の出すルール次第か。




