リスクとリターンの釣り合い
「ああ。私達が中途半端に選手を倒してしまった場合は戦況が停滞してしまう危険性があるな。……だが、そんな事は大会運営が想定していないハズがないな。何らかの対策はあるハズだ」
「想定しているというと……無理矢理にでも戦いを強制させるようなイベントが発生するって事か」
「だろうな。それが何なのかは知らんが」
「パッと思いつく限りでは、バトルフィールドの縮小だな」
戦闘の参加人数が減る事で発生する戦いが停滞する原因の一つは、各選手が拠点に引きこもって外へ出ようとしない事にある。要するに参加人数と比較してフィールドが広過ぎる状態に陥ってしまう事が原因だ。ならば、そのフィールドそのものが時間経過と共に縮小していけばこの問題は解決するハズだ。
「フィールドの縮小? どういう事だ?」
「要するに参加選手が脱落していく事で人口密度が減っていくのが停滞の原因になっているハズだ。ならばどんどんフィールドを狭くしていって……範囲から出てしまったら場外反則で失格にしてしまえば良い。それだけで拠点で引きこもっている選手は引きずり出される事になる」
バトルロワイアル系のゲームなら良くあるシステムだ。
「……面白い発想だが、具体的にどう縮小していくかで問題にならないか?」
「そりゃ、なるだろうな。どこを中心としてフィールドが縮小していくのかを予め決めて告知しておくのか、それとも完全にランダムで決めてしまうのかでも色々と反発が来るだろう。……が、それを含めて実力と言い切ってしまえば選手は黙って従うしかないだろう。観客はどうだか知らんがな」
一番の問題点はどこを中心にフィールドが縮小していくかがランダムであったとした場合、そのランダム性が本当にランダムなのか? とどうやって信じてもらうかだ。開き直ってしまっても良い部分ではあるが……選手はそれで納得しても観客が納得するかどうかは別問題だな。
「ランダムと言ってもな……ダーツで刺さった部分を中心にするとかか?」
「人間が決定に絡む以上、それだって完全にランダムとは言い切れないな。予め決めておいたものを選手に事前に告知するのが一番公平なんじゃないか?」
「そんな事をすれば、最終的に戦う事になる範囲に陣地を取ろうとするんじゃないのか?」
「それで問題無いだろう。全員が一か所に集まろうとすれば戦闘は激化するんだからな」
序盤で積極的に潰し合って、ベストポジションで拠点を作って引きこもる。後はフィールドの縮小で炙り出された選手に対して有利な場所で攻撃を仕掛けていく。中盤の中だるみが酷い事になりそうな予感だが……これがリスクとリターンの見合ったルールになるだろう。




