大会の結果次第
「大会の結果次第でとんでもない事件が起こったりするわけだ。とは言っても、大会が終わった直後に即戦争ってわけでもないんだろ?」
「まあな。あくまでもそういう機運が高まるという話だ。だからその後の行動さえ誤らなければ戦争などと言う事態には陥らん」
「その後の行動を誤った国が過去にあったわけか……」
「ああ。もっとも、戦争のきっかけになったのは確かだが、そもそも戦争になるのは時間の問題だったとも言われているがな」
まあ、最後の決定的な一押しになる事はあっても、それが動機になるってのは想像出来ないからな。
「それはそうだろうな。いくらその国が落ち目だからって、積極的に侵略しましょうなんて考えには至らないだろう」
「同レベルの規模の国力だったり、兵を送って自国の守りが手薄になったところを他の国から攻め込まれる……という事があったり等の要因が複雑に絡み合っている状態ならその通りだが、シンプルに国力の差が大きいと一気に攻め込まれる事もあるぞ。だから大国に挟まれた小国は毎年本気で挑んでくるようだ」
冗談とかじゃなく、本当に文字通りの意味で国家の行く末がかかっているって意気込みで大会に臨んでいるわけか。モチベーションも覚悟も他の選手とは一線を画すだろうな。
「国の命運がかかってるとなったら、そりゃ必死にもなるか」
「だからか、小国で有力な魔術師が現れると、周辺国家はこぞってその魔術師を厚遇で召し抱える傾向にある。大国と比較して、そういった魔術師が占める影響力は相対的に大きい物になるからな」
「……人材不足に陥らせてから攻め込むってわけか……? 随分とエグイ真似をするな……」
小国と大国じゃ受けられる待遇も雲泥の差が出るだろうからな。大概の奴は大国へ流出するだろうってのは想像に難くない。
「まあ、ここ数十年はそういった動きも無くなって、比較的平穏な時勢が続いている。……単に目ぼしい小国が消え去って膠着状態が続いているだけという見方をする専門家もいるがな」
「そりゃあ、そういう風に考える専門家もいるだろうな」
当たり前の話だが、そうやって小国が攻め滅ぼされて行けば数は減っていくわけだから、どこかで煮詰まる事になるハズだからな。
「逆に言えば、つい数十年前までは存在していた国というものがあるわけだから、大会の結果次第では独立の機運が高まる事もあるぞ」
「象徴的な人物が優勝でもしたら、そういう動きは出始めるかもな」
そんな事を話していると、部屋の扉からノックが聞こえて来た。ルームサービスとして頼んでいた料理が運ばれてきたのだろう。




