大会の結果がもたらすもの
「火霊祭で良い成績を出し続ける事で、世界中に自分の国の力をアピールする事が出来るわけだ。……要するに代理戦争の側面もあるってわけだな？」
「ああ。優れた魔術師の存在はそれだけで脅威だし、そういった魔術師が多ければ多い程、その国の魔術師の平均レベルは高いという事になるからな。これは当然その国の戦力の目安にもなる」
優れた魔術師が多ければその分、それに近いレベルの魔術師も多くいるという理屈になる。という事は兵士のレベルもそれなり以上である可能性が高いわけだ。
「火霊祭に出場している選手が特例中の特例ってレベルで常識外れでもない限りは教育や育成能力が高いと考えられるからな。高い水準で集められた兵士は……かなりの脅威と言えるな」
「だからこそ火霊祭を筆頭に、四大大会は極めて重要な役割を持つ。大国や、近隣の国と微妙な関係になっている国は一定以上の成績を収めていないと舐められる事になるからな」
「まあ、選手のレベルが下がったら、必然的にその国の兵士の強さの上限も知れたものになるわけだからな」
本当にその国の兵士の強さの上限が火霊祭に出場した選手より弱いって事は無いとは思うが、兵士だけ強くて火霊祭に出場する選手の質は劣悪なんて事になりえるかと聞かれたら、それは考えにくいからな。基本的にこの二つの質はある程度は比例の関係にあると考えるのが自然だろう。
「一部の例外はあるが、基本的にそう考えても良いだろうな。火霊祭で成績の奮わなくなった国は弱くなったと考えられる事が多い。実際、火霊祭での結果が原因で戦争が回避されたという出来事もあれば、逆に戦争が始まったという出来事も長い歴史の中にはある」
「やっぱりそういう事もあるのか」
何百年も続く由緒ある大会で、その結果が今後の人生を大きく左右すると言われる程の影響力を持った、権威ある大会である以上は国内外からの評価も大きく変化するとは思っていたが、やはり国力の目安として使われているのか。
「ああ。周辺国家から侵略を受けそうだった弱小国家から、突然火霊祭の優勝者が現れて侵略の計画が白紙になったという事例もあるし、逆に火霊祭で惨憺たる結果を出した国が宣戦布告を受けるという出来事もあった。宣戦布告をしたのは、火霊祭で圧倒的な成績を出した国だ」
火霊祭で圧倒的な成績を出した事で、国民全員が勢いに乗った形か。まあ、戦争には士気の高さやら色々な物が複雑に絡み合ってくるものだからな。勢いのある内に落ち目の国を攻め滅ぼしてしまおうって発想はそこまで不自然では無いな。
